帯状疱疹ワクチンが認知症予防に効果!?日本では2025年度から定期接種化【米スタンフォード大の研究より】Photo:PIXTA

 米スタンフォード大学の研究者らが、帯状疱疹(HZ)ワクチンによる認知症予防効果を相次いで報告している。

 1報目は、英ウェールズの電子医療記録を利用し、HZワクチン(弱毒性の生ワクチン)接種の有無と認知症発症率を比較したもの。

 ウェールズでは2013年9月1日からHZワクチン接種プログラム(71~80歳未満が対象)が実施されているが、接種対象者は1933年9月2日(基準日)以降に生まれた住民に限定され(接種可能期間は1年)、接種に際しては厳密に資格が確認される。

 研究者らはこの点に目をつけ、基準日前に生まれた住民、つまりワクチン接種の非対象者と基準日以降生まれのワクチン接種対象者で認知症の発症率を比較したのだ。同じ地域で普通に生活し、普通に医療保険を使っていた人たちの比較になる。大きな違いは、HZワクチンを接種していたか否かだ。

 解析対象者は1925年9月1日~42年9月1日に生まれ、基準日時点で認知症と診断されていなかった28万2541例。ちなみに、基準日の1週間前に生まれた人たちのHZワクチン接種率はわずか0.01%であったのに対し、基準日1週間後に生まれた人たちの接種率は47.2%に増加している。

 接種後の医療データを7年間、追跡調査した結果、HZワクチンの接種により新たに認知症と診断される確率は3.5%ポイント低下。相対的には20.0%のリスク低下が確認された。特に女性の接種者では新たに認知症と診断される確率が5.6%ポイント有意に低下している。

 さらに同大学の別の研究グループはオーストラリアの医療データを用い、同じ手法で50歳以上の10万1219例を対象に7.4年間の追跡調査を行ったところ、やはり、HZワクチンの接種者では認知症発症率が非接種者より1.8%ポイント低下し、先行したウェールズの研究結果を裏付けることになった。

 さて、日本では2025年4月1日以降、65歳を対象にHZワクチンが定期接種化されている。経過措置として今後の5年間は70歳、75歳、80歳など5歳刻みで一部公費負担の接種が可能だ。

 HZワクチン本来の効果は、もちろん帯状疱疹の発症と合併症の神経痛を予防することにある。対象年齢の方は接種を考えてもいいだろう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)