数日後、金原は人事部長から呼び出されて驚いた。退職代行業者から電話があり、石田が退職の意向を伝えてきたという。「いったいどういうことだ!」と息巻く人事部長に、言葉を失ってしまう。
退職代行……金原は初めてのことに戸惑い、社外の専門家である社労士のカタリーナに相談してみることにした。カタリーナは、歯に衣着せぬ物言いで相談者に愛のムチを入れる、ちょっと風変わりな社労士だ。
なぜ退職代行サービスが利用されるのか?

カタリーナ「こんにちは、社労士のカタリーナです。今日はどんなご相談かしら?」
金原「実は、部下が退職代行業者を使って辞意を伝えてきたんですよ。なんで私に直接伝えてくれなかったのか……退職理由もどうもはっきりしないんです」
金原は、最後に交わした2人のやり取りをカタリーナに伝えた。
カタリーナ「なるほど、あなたが戸惑う気持ちもわかるわ。若手が辞める理由といえば、仕事内容が思っていたものと違うとか、仕事がきついとか…」
金原「いや、仕事がきついってことはないはずですよ。彼には残業もほとんどさせていませんし」
カタリーナ「最近の若い人は『タイパ意識』が強いから。あ、タイパとは、タイムパフォーマンスのことね。『このままやっても、時間の無駄かもしれない』と思い始めて、本人は悶々としていたのかもしれないわ」
金原「それにしても、見切りが早すぎるでしょう?今年入社ですよ?石の上にも3年っていうじゃないですか」
カタリーナ「それじゃ化石になってしまう、くらいの感覚なのかもね」
金原「とにかく驚いたのは、退職代行を使ってきたことですよ。辞めたいなら、ハッキリそう自分で言えばいいじゃないですか!」