
銅相場は2024年に過去最高値を記録し、その後も高値圏で推移してきた。しかし米国の「相互関税」発表を機に、国際市場は大きく動揺。ニューヨーク商品取引所(COMEX)とロンドン金属取引所(LME)の価格差拡大や中国・欧州の景気見通し、ドル相場の変動などが複雑に絡み合い、相場の先行きは読みづらい状況が続いている。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
昨年5月の史上最高値以降も高値圏
3月後半には1万ドルを回復
自動車、エレクトロニクス製品、建築など幅広い分野に使われる銅は、ロンドン金属取引所(LME)での取引が国際指標とされ、2024年5月に史上最高値の1トンあたり1万1104.50ドルをつけた。
その後も高値圏で推移し、25年3月後半には1万ドルを回復した。一方、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の銅は、3月後半に1万1848ドルと史上最高値を更新し、LME相場を1600ドル強上回っていたとみられる。
トランプ米政権が「相互関税」に言及するようになった2月半ば以降の銅相場の変動要因を振り返ってみる。
2月10日は、前日にトランプ米大統領が相互関税を近く発表し、ほぼ即時に発効させると表明し、鉄鋼・アルミニウム・半導体など品目別の関税を導入することにも意欲を示した。
銅にも関税が賦課されるとの思惑が強まり、COMEXの銅の、LMEの銅に対するプレミアムの拡大につながった。LMEの銅相場もつれて上昇した。
12日は、中国当局が不動産開発大手の万科を巡って、年内に約500億元相当の資金不足を補う支援策に取り組んでいるとの報道が買い材料になった。
20日は、トランプ大統領が、中国と新たな貿易のディール(取引)で合意することは可能だと述べて米中貿易戦争の激化回避が期待され、銅や株式などリスク資産が上昇した。
週が替わって27日は、トランプ大統領が、メキシコとカナダに対する25%の関税措置について前日に4月からとしていたものを3月4日発動とし、2月4日に発動した中国に対する追加関税もさらに10%を上乗せすると述べたことで、リスクオフ・ムードが広がり、銅価格は下落した。
次ページでは、3月以降の相場を検証しつつ銅価格の先行きを占う。