トランプ関税が揺さぶる「銅相場」の見通しは?価格を左右する「2つの経路」Photo:PIXTA

トランプ政権の関税政策は銅相場にも大きく影響する。米国のCOMEX(ニューヨーク商品取引所)の相場には価格上昇圧力がかかる。関税の報復合戦で中国の輸出が減少することは中国の銅消費減少につながり、価格の押し下げ要因となる。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

トランプ氏圧勝を受けて
11月は下落

 世界景気や中国景気に敏感な銅相場(LME:ロンドン金属取引所ベース)は、2024年9月下旬~10月上旬に1トン当たり1万ドルを回復した後は、軟調な推移となっていたが、25年に入って持ち直している。以下では、24年11月以降の銅相場の変動材料を振り返りつつ、今後の見通しを考えてみたい。

 11月4日は、米大統領選を巡って様子見ムードが強い中、FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げが見込めることなどから、為替市場でややドル安が進み、銅を含めたドル建てのコモディティーの相場を支援した。

 6日は大統領選でのトランプ氏の圧勝を受けて、大幅下落となった。米市場金利の上昇などを受けたドル高や、バイデン・ハリス政権で支援されていた電気自動車(EV)や再生可能エネルギーへの支援が後退するとの見方、高関税が課せられると世界景気が悪化するとの見方などが銅の下落につながった。

 逆に7日は大幅上昇となった。前日の下落の反動、トランプ次期米政権の政策について高関税を突然課すようなことはしないとの冷静な見方が広がったこと、ドル安、10月の中国の貿易統計で輸出の好調や銅輸入の底堅さが示されたことが銅相場を支えた。

 しかし、その後、下落が続いた。8日は、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が閉幕したが、市場参加者が期待していたような財政出動による景気刺激策が発表されなかったことが弱気材料になった。

 週明け11日は、大統領選でのトランプ氏の勝利を受けたドル高観測や、10月の中国新規人民元建て融資が市場予想を下回ったことを受けて、銅は続落した。

 12日は、トランプ次期米大統領が対中強硬派のマルコ・ルビオ上院議員を国務長官に指名する意向との報道を受けて、米中対立の激化による世界の銅消費の過半を占める中国経済への逆風が連想され、銅相場は下落した。

 13日は、次期米政権の政策への思惑からドル高が進み、中国の景気刺激策への失望が続いたこともあり、銅相場は圧迫された。

 その後は、しばらく一進一退の動きになった。18日は、前週までの下落から値頃感があり、ドル安が進んだこともあって反発した。米大統領選でのトランプ氏圧勝を受けた相場の下落は、一服したとの見方があった。

 21日は、ウクライナ側が、ロシア軍が大陸弾道弾を使用したと発表(後に、極超音速中距離弾道ミサイル「オレシニク」を発射したとロシアが発表)するなどウクライナ情勢が一段と緊迫したことや、ドル高が進行したことが売り材料になった。

 25日は、前日に9000ドル割れまで売られ、値頃感が生じたことなどから買い戻された。22日にトランプ氏が、財政規律を重んじ、経済や市場の安定を優先するとみられている投資ファンド経営者のスコット・ベッセント氏を財務長官に指名すると発表したことも投資家のリスク選好を強めたとみられた。

 次ページでは、12月以降の相場を分析し、トランプ関税の影響を検証する。