原油相場はOPECプラスの増産方針で4年ぶり安値、サウジの増産姿勢が新たな下落圧力に

原油相場は2025年4月、米中貿易戦争の激化とOPECプラスの増産加速方針を受けて急落した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)が1バレル=55ドル台に落ち込む場面もあった。相互関税の一時停止や中東の地政学リスクが買い材料となるも、上値は限定的だ。サウジの価格下落容認の姿勢が、下落圧力となっている。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

貿易戦争と産油国増産への
懸念から下落

 原油相場は、3月下旬には上昇する場面もあったが、4月上旬に大幅急落し、4月9日には、米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は一時1バレル当たり55.12ドル、欧州北海産のブレントは58.40ドルとそれぞれ2021年2月以来の安値を付けた。足元は再びその安値に近づきつつある。

 3月中盤は一進一退だった。

 7日は、石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC産油国で構成する「OPECプラス」が決定した4月から減産縮小を始める方針について撤回する可能性があるとのロシアのノバク副首相の発言を受けて上昇した。

 週が明けての10日は、中国政府が4日に米政権が実施した追加関税への報復関税を発動したことや、9日放映のインタビューでトランプ米大統領が景気後退の可能性を否定しなかったことで、貿易戦争による世界景気悪化懸念が強まり、原油は下落した。

 12日は、米エネルギー情報局(EIA)による週次石油統計で石油製品在庫が減少したことや、OPECが月報で世界の石油需要見通しを据え置いたことが強気材料になった。

 13日は、国際エネルギー機関(IEA)の月報で需給緩和見通しを示したことや貿易戦争への懸念を背景に原油は反落した。

 欧州連合(EU)は12日に米政権が発動した鉄鋼・アルミニウムへの25%の追加関税への対抗措置として、4月1日からウイスキーなどの米国産品に追加関税を課すと発表したのに対して、トランプ米大統領はEUからのワイン・シャンパンなど酒類に200%の関税を課す意向を表明した。

 18日は、イスラエル軍がガザでイスラム組織ハマスを標的にした大規模な軍事作戦を行ったことが買い材料だったが、米ロ首脳が電話協議で、ウクライナ停戦をエネルギーインフラ分野から始めることで合意して一転売られた。

 3月下旬に入ると、地政学的な材料を巡る思惑などから相場は強含みで推移した。次ページでは下旬以降の相場動向と今後の見通しについて検証する。