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ゲームコンテンツは文化になれないのか?
コンプガチャ騒動から1年を経た業界の現状
――ソーシャルゲーム・バブル崩壊後の展望【前編】

石島照代 [ジャーナリスト]
【第37回】 2013年6月10日
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 このキャリア3社の施策は、親が許可しなければ、18歳以下の未成年はコミュニティサイトを閲覧できないというもので、コミュニティサイトそのものであるSNSを扱う企業にとってはコンプガチャ騒動以上の死活問題だった。当然、南場智子ディー・エヌ・エー前社長ら、携帯コンテンツプロバイダー関係者は反発した。特に当時のモバゲーユーザーは18歳以下が29%も占めており、投資家らは閲覧制限施策が打撃を与えると考えたためである。事実、ディー・エヌ・エー株は、総務相の要請が報じられただけで約1500億円の株主価値を失った。

 当時のSNS系企業関係者の言い分を端的に言うと、「これだけ儲かっているSNSサービスの何が悪いのか」というものだった。だが、世論および永田町関係者は、使い方がよく分からないSNSを子どもに使わせることに不安を募らせているのであり、双方の言い分はねじれていた。

 とはいえ、南場前社長も「(モバゲーを通じた)出会いを禁じてはいるが、事故が皆無なのかと言われれば、そんなことはない」と限界を認めていた。これは、SNSサービスの性質上防ぎようがないが、現在のようにFacebookなどが普及していない状況では、前述の事件のむごたらしさに注目が集まるのは仕方のない話であった。

 だが、事業者が世論とのズレに気づかない限り、SNSサービスの未来はない。必要なのはSNSに対する社会的認知である。そのころ家庭用ゲーム業界はゲーム脳問題などで受難の日々を歩んできたが、任天堂は家庭用ゲーム機「Wii」をサービスするにあたって、母親を敵に回さないように心がけたことで一定の市民権を得た。筆者も当時、SNS系企業もゲーム業界にならって、時間をかけて市民権を獲得することを勧める記事を夕刊フジで書いた。

 それから3年後、騒動の中心にいたSNS系企業関係者と話をする機会があった。「あのときの『儲かってるから、SNSはいいビジネス』という論法は、まずかったんじゃないですか」と聞くと、「実は南場さんも、『あれはまずかった』と言っていた」と教えてくれた。そして、南場前社長はその後おおっぴらに反論することをやめ、会社としてプロ野球チームの買収に全力を挙げるようになったという。

 確かに、時間をかけずに、社会的認知や市民権を得る方法としては、プロ野球チームの買収は悪くない。紆余曲折はあったものの、ディー・エヌ・エーは2012年、念願のプロ野球球団「横浜ベイスターズ」の買収に成功した。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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