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ゲームコンテンツは文化になれないのか?
コンプガチャ騒動から1年を経た業界の現状
――ソーシャルゲーム・バブル崩壊後の展望【前編】

石島照代 [ジャーナリスト]
【第37回】 2013年6月10日
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 昨年10月26日(現地時間)、任天堂の宮本茂専務は欧州の権威ある賞のひとつ、スペイン皇太子が主催する「アストゥリアス皇太子賞」を受賞した。宮本専務は2006年にも、フランス政府・文化通信省から芸術文化勲章「シュバリエ章」を受章しているが、いずれも他のゲーム業界関係者の受賞はない。

 アストゥリアス皇太子賞は、2011年に福島第一原子力発電所事故の初期対応にあたった「フクシマ50」と呼ばれる人々が、平和部門を受賞したことで知られる。宮本専務が受賞したのは「コミュニケーションとヒューマニズム部門」である。

 宮本氏の受賞理由は、「現代のゲームの父であるだけでなく、豊富な想像力によって、思想・民族・国家を超え、あらゆる世代の人々が相互に交流できる、新たな形のコミュニケーションやつながりを創造することを成し遂げた」ことだという。宮本氏は儲かるゲームを作ったから表彰されたわけではない。社会に貢献した「文化としてのゲームコンテンツ」を生み出したことで表彰されていることは、もっと強調されていい。

 この表彰が任天堂関係者を勇気づけるものであったことは想像に難くない。岩田聡氏が2002年に任天堂社長に就任してから、私たちは幾度となく「ゲーム人口の拡大」という言葉を聞いているが、この「ゲーム人口の拡大」という言葉と、「文化としてのゲームコンテンツ」という言葉には深いつながりがあるからだ。

 岩田社長は2010年3月期第3四半期決算説明会で、日米のビデオゲームの社会受容性が低いことに触れ、「ゲーム人口拡大の中期目標は、ビデオゲームの社会受容性を、他の娯楽並みに改善していくことで、市場が活性化できる」と述べている。言い換えれば、社会受容性が低ければゲームビジネスは縮小するということを言っているのと同じである。その戦略を変えない限り、社会受容性の増加を妨げるコンプガチャを、岩田執行部率いる任天堂はやるはずがない。

 しかし、この受賞ニュースを聞いた時、筆者は暗い気持ちになった。なぜなら、その任天堂を生み出した日本では、ゲームコンテンツはコミュニケーションツールではなく、「日々、血の滲むような努力とPDCAを回すことによって支えられた」儲かるビジネスとしてのみ、評価されているからだ。アストゥリアス皇太子賞の受賞理由を、日本社会が正確に理解できるとは到底思えなかった。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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