Photo:EEP社
先日、三井造船との経営統合説が浮上し、想定外の脚光を浴びた川崎重工業。この説は即座に両社から完全否定されたが、5月22日と24日に発表された川崎重工の部門別中期経営計画では、とりわけ船舶海洋カンパニーの“野心的な目標”が業界の度肝を抜いた。
2015年度に海外拠点の売上高構成比は、12年春にブラジルのEEP社から請われて資本参加したばかりの「新規大型造船所」での売り上げが75%近くに達するとの見通しを明かしたからである。
残りの15%前後は1995年に中国海運最大手のCOSCO(中国遠洋運輸集団)と折半出資で設立したNACKS(南通中遠川崎船舶工程)が占めており、さらに10%程度が07年から始まった第2案件のDACKS(大連中遠川崎船舶工程)になるとされた。
川崎重工の船舶部門は、国内に神戸工場(兵庫県)と坂出工場(香川県)を持つが、生産のメインは、人件費が安く、相対的な価格競争力があるNACKSとDACKSが担っている。例えば世界の建造量ランキングでは、川崎重工単体ではなく、合弁会社のNACKSとして24位に入っている。
川崎重工にとって、ブラジルのEEP社の造船所は、“第3の海外大型案件”である。現在は、まだ造船所を建設中にもかかわらず、「すでに国営石油会社のペトロブラスから6隻の新造船の受注を獲得した」(川崎重工幹部)など、好調な滑り出しを見せている。
造船の次は海洋構造物へ
向こう3年のうちに、ブラジル案件だけで約75%を稼ぐ――。
そこまで大きく出るのは、参入障壁が高く、また付加価値も高い「海洋開発」(オフショアで石油・天然ガスなどを生産する)で必要な船種を狙っているからだ。受注した6隻は、資源開発の前に試掘で使う「ドリルシップ」(掘削船)であり、中古のタンカーを「浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備」に改造する需要も取り込む。