このように、集まった粒子が1つにまとまって振る舞うことをボース・アインシュタイン凝縮といいます。インドの物理学者サティエンドラ・ボースが指摘し、アインシュタインによって紹介されました。

 日常会話で「凝縮」という言葉は、バラバラだった意見をまとめるときなどに使いますが、ボース・アインシュタイン凝縮もバラバラだったクーパー対の運動が、すべて同じ運動状態に落ち着くということです。

「高温」で超伝導を示す物質が
発見されて一大ニュースに

 したがってクーパー対ができている状況にある金属を、ある温度以下に冷やすと、ボース・アインシュタイン凝縮が起こり、すべてのクーパー対が同じ運動状態となって、電流が抵抗なく流れる「超伝導」が実現するのです。

 また、ある種の超伝導体は、内部に超伝導にならない部分がありそこだけを磁場が通過するため、まるでピンでとめたように磁場中で安定に浮上するという性質をもっています。通常の磁石でも反対の極同士は反発し合いますが、実際にやってみればわかるように、どんなことをしても安定な状態でお互いを一定の位置にとどめておくことはできません。

 この性質はピン止め効果と呼ばれ、リニアモーターカーが安定に浮上できるのは、先述したマイスナー効果とこのピン止め効果のおかげです。

 このように素晴らしい性質をもつ超伝導体ですが、この現象が通常の1気圧の下で起こるのは、1980年代中頃までは「絶対温度30度程度が限界」と考えられていました。そのため超伝導を実現するには、絶対温度4度の液体ヘリウム(希少な元素ヘリウムで作られる)という高価な冷却材で冷やさなければならず、応用も限られていました。

 1987年1月、一大ニュースが世界中を駆け回りました。それまでの常識では考えられないような「高温」で超伝導を示す物質が発見されたのです。

 先に述べたように、それまでの超伝導体は高価な液体ヘリウムを使って冷やす必要がありました。それに対して、液体窒素は安価で利用しやすい冷却材です。