息子の成長が自分の働き方と
価値観を変えるキッカケに

 非人道的な働き方を継続しながらも無事に工場が完成し、多少余裕が持てるようになった頃(とはいえ残業時間は100時間弱でしたが)、私は今後の人生について考えていました。

 自分の人生について真剣に考えるようになったキッカケは息子の成長でした。子供が1歳になってもあまり可愛いと思えず、「子供が生まれると価値観が変わる」というのが理解できずに悩んだ時期もありました。

 しかし、息子が2歳を過ぎたあたりから意思疎通ができるようになり、「パパ、パパ」と話しかけてくれるのが可愛くて仕方がなくなり、今まで許容できていた長時間労働や休日出勤がとても許容できるものではないと感じるようになりました。

 そもそも、私は何のためにここまで自分を犠牲にしているのだろうか?そこまで出世する必要があるのだろうか?出世するのは何のためだろうか?大切なのは目の前の家族なのではないか?

 余裕がなく、日々目の前の業務をこなすことで精いっぱいだったときには気づかなかった、気にならなかったことがとても気になるようになり、日々もんもんとしながら過ごしていました。

「俺がやらねば!」と月150時間タダ働き…その果てに見つけた「幸福に生きる」シンプルな答え『俺たちの転職物語』(歩兵、中尉、KADOKAWA)

 たまに定時帰りができて仕事終わりですぐに家に帰って子供と遊んでいるときや、休日に子供と妻とまったり公園で遊んでいるとき、言語化できない幸福感を得ていました。何となくですが「この感覚は大事にしなければいけない」と強く思ったことを今でも覚えています。

 1ヵ月程、本を読んだり、長々ネットサーフィンをしたり、ノートにアイディアを書いたりして、一生懸命自分の人生について考えました。

 そして、たどり着いた結論は「やりたくないことをやり続ける人生は不幸だから、やりたくないことをできるだけやらない人生を送れば不幸ではなくなる=幸福に近づくだろう」でした。