『【推しの子】』など他社IPのアニメ化も!
多様なメディアと海外への展開力が育つ

 近年、IPの展開力がめきめきと上がっている点も多くのプロが期待する理由だ。まず着目したいのは、多様な「メディア」への展開力。栗原さんは、「子会社にアニメ制作会社(Studio KADAN、チップチューンほか)もゲーム制作会社(アクワイア、スパイク・チュンソフトほか)もある点が強み。出版事業で創出したIPを、グループ内でアニメ化もゲーム化もできる。これは、他出版社と一線を画す優位性です」と分析する。KADOKAWAが特に力を入れているのが、グループでのアニメ内製だ。2024年7月には、自社が主幹事を務めた人気アニメ『【推しの子】』のアニメーション制作スタジオ「動画工房」を子会社化し、話題を集めた。2025年5月時点で、グループのアニメ制作スタジオは7社となっている。

 アニメ内製の体制を整えながら、自社原作だけでなく、前段で触れた『【推しの子】』をはじめとする他社原作のアニメ化にも積極的に取り組む。株主総会では、「他社IP活用に対するスタンス」ついての質問が挙がったが、夏野剛取締役 代表執行役社長 CEOは「現状は、他社作品の比率を増やしているわけではなく、全体の本数を増やす中で他社作品も受けていくということをやっている」と説明。自社・他社作品の割合に具体的な目標は持たず、機会があれば多くの作品をアニメ化していく方針を示した。この柔軟かつ貪欲なスタンスで、今後もアニメ事業は過去最高業績を更新していくことが期待される。

 次に、「海外」への展開力の高さについても触れておきたい。エンタメ社会学者の中山淳雄さんは「KADOKAWAは海外で日本のコミックやライトノベルの需要が拡大していることに目をつけ、海外拠点を増やしています。2024年に欧州の大手出版系会社などと合弁会社を設立しましたし、2025年にはイタリアのマンガ・ライトノベルの出版社を買収しています」と、具体例を挙げながら評価する。2025年3月期は、国内紙書籍の市場が縮小する中、アジア及び米国が成長し、海外紙書籍は増益となった。2026年3月期も海外紙書籍は新拠点の貢献などにより、増収増益の予想だ。

 基本戦略に「グローバル・メディアミックス with Technology」を掲げ、多様なIP創出と、それを世界に展開する戦略を明確に打ち出しているKADOKAWA。2028年3月期に売上高3400億円(2025年3月期は2779億円)を目指す中期経営計画に変更はなく、グローバルIP企業としての飛躍を期待したい。

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チャート提供:マネックス証券
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