永続的な資産家を目指すには、仕組み化せざるを得ません。創業者のカリスマ性や特定の個人の能力に頼るだけでなく、明確なルール、権限委譲の仕組み、ガバナンス体制といった「仕組み」によって継続性を担保することが肝要なのです。

 例えば、承継システムでいうと、現代では上場企業など、子会社の社長から次期社長を抜擢する“ミニ社長方式”が一般的かつ有効な手法になっています。

 現代の資産家にとっても、「理念の継承」と「仕組みの設計」は無視できない要素なのです。

守ることを押しつけず
「守れる」形を作る

 私は現場で出会う中で、資産を長く維持できている家には、共通点があると気付きました。それは、代を越えて“対話”があることです。

・ 親が子に「何のために資産を残すのか」を語る
・ 子が親に「その意志をどうやって引き継ぐか」を自ら考え、伝える
・ 孫にまで「家の価値観」を言葉で伝える

「金を作った親」の1代目苦労だけでなく、「守るためにどうしたか」という2代目の工夫、そして「潰さないために何を継ぐべきか」という3代目の責任までが語られている家には、制度の壁を乗り越えるだけの「意思のリレー」が存在するのです。

 人生の終盤になって父から突然「わが家の資産を引き継げ」と言われても、うまく引き継げるわけがありません。そこには理念も仕組みもないからです。

 資産を守るとは、誰か一人が頑張ることではなく、「語り、仕組み、責任をバトンのようにつなぐこと」ではないでしょうか。

 最後に、ロスチャイルドの名言を紹介して終わりにしたいと思います。

It takes a great deal of boldness mixed with a vast deal of caution to acquire a great fortune; but then it takes ten times as much wit to keep it after you have got it as it took you to make it.
富を築くには大胆さと慎重さが必要だが、築いた財産を守るにはその10倍の知恵が要る