学長も任期が切れれば
ただのヒラ教授に戻る

 なお、大学教員の職階には教授より上は存在しないので、いったん教授に昇任すればその大学を退職するまでずっと教授である。少なくとも筆者の知るかぎり、大学教員には、職階の上での昇進はあっても降格はない。

 なお、ときに誤解されているが、たとえば学部長とか副学長は、職階ではなく役職なので、これらの役職に就いても教員としての職階は教授のままである。

 多くの国立大学の給与体系では、教授は准教授等とは給料を決める基準になる「俸給表」が異なるので、若干の給与の差は生じるのだが、教授はそれ自身が役職ではないので、役職手当は付かない。

 国立大学教員が教授になっても、その実質的な給与が同じような年齢の管理職クラスの国家公務員と比べてかなり低い理由の1つは、この役職手当の不在にある。

 また大学の世界では役職にはほぼ必ず任期があるので、ある役職の任期が終われば、新たなる役職につかないかぎり、ただの教授や准教授に戻るので、給与も元の金額に戻る。

 筆者の場合も同様であり、研究科長の任期が終わる2025年4月には、役職手当のない「ヒラ教授」に戻るはずである(実際にはこの文章を書いた後、筆者は同じ部局の副研究科長兼、評議員に選ばれてしまったので、その後も若干の役職手当をもらうことになった)。

 それは学長の場合も同じであり、学長の任期を終えた後、まだ定年退職前であれば、「前学長」が「ヒラ教授」になる場合も出現する。

学問の性質が異なりすぎて
昇進基準を一律にできない

 では、これらの職階に就くためには、どれくらいの実績が必要なのだろうか。

 実はこの点について、大学の世界では普遍的な基準は何も存在しない。すなわち、大学はもちろん、部局や時代により、大学教員の昇進基準は大きく異なっている。

 たとえば筆者が在籍した1990年代前半の愛媛大学法文学部では、嘘か本当か、教授への昇進基準はどんな論文でも6本もあれば大丈夫だ、と囁かれていた。

 しかし、現在ではそのレベルでの教授への昇進はきわめて困難であり、有名な国際雑誌に掲載された論文がなければ、教授はおろか助教から講師への昇進も不可能だ、というところも多くなっている。