「未婚・子なし」の人が救われる
“たった1つ”の方法とは?

 ネットやSNSでも同様の主張が多い。ただ、残念ながらこのようなバラマキは少子化対策ではほとんど意味がないことがわかっている。

 例えば、米The NewYork Timesは「Can China Reverse Its Population Decline? Just Ask Sweden」(2023年2月9日)という記事で、子育て支援が充実しているフィンランドやフランスでも出生率が過去最低水準となっている事実から、「バラマキ」では少子化は食い止めることができないと指摘している。

 これは冷静に考えて見れば当然だ。補助金がもらえるとか行政のサポートが充実してますというニンジンは、子どもをもつべきか否かと検討しているカップルの背中を押すことができる。しかし、先ほど与謝野晶子が述べたように「一人の口を糊することがやっとの経済的弱者」からすれば、「あぶく銭」を受け取っても生活費か貯金に消えるだけだ。

 国家主義の少子化対策は、独身から吸い上げたカネを財源にバラマキをした。欧州の高福祉・高負担国家の場合、それを24%などのバカ高い消費税を財源にやっている。財源が違うだけでどちらも「人はカネをもらえば子どもを産むものだろ」というかなり乱暴な考えが共通している。

 国家主義の場合、子どもがたくさん産まれたのはバラマキのおかげというよりも、丈夫な子どもをつくらないと「非国民」扱いされるということが大きかった。しかし、現代の高福祉国家にはそういう同調圧力はない。そのため、「バラマキには効果がない」というデータが徐々に集まってきているのだ。

 では、本当に意味のある少子化対策は何かというと、与謝野晶子の言ったように、経済的弱者が不安なく暮らせるような社会をつくることだ。

 そのために必要なのは「経済成長」である。国家がコントロールした計画経済や、平等な公共サービスを掲げた社会主義国家が崩壊したことからもわかるように、この経済成長というものは「バラマキ」では絶対になしえることができない。

 半世紀にわたって莫大な補助金が投入されてきた日本のコメ農家の「競争力」が低下しているのが、その証左である。

 しかし、今の日本はそういう当たり前の話は通じない。独身税にブチギレする人が多いように、日本という国の不平等な制度に怒りを覚え、頭に血が上っている人がたくさんいるので、経済成長などとまどろっこしい話より、今すぐ現金が手に入る「バラマキ」を求めている。

 外国人を優遇するな。高齢者を優遇するな。そして、子どもや子育て世代を優遇するな。

 そうやって「特権的な立場の人々」に憎悪を強めながら、今度はこれまで冷遇されていた人々を優遇せよという主張が大きな支持を得ているのだ。