プリウスが狙われるもうひとつの理由が、「静か」なことです。ハイブリッド車ならではの特徴で、エンジン音が非常に小さく、静粛性はピカイチ。プリウスに乗って夜中に音もなくターゲットに近づいて、目的を果たし、音もなくその場を去ることができる――。このように静粛性が高いハイブリッド車やEVは、犯罪者の足として盗難に遭う可能性が高いといえるでしょう。
さて、そのプリウスが盗まれた人の話によると、最終的に犯人は捕まりましたが、なんと約20件もの犯行に愛車が使われていたと判明したそうです。さらにその犯人は他にも数台のプリウスを盗み、犯行に及んでいたとのこと。恐ろしい話です。
そして、きちんと施錠していたのになぜ盗まれてしまったのかというと、どうやら運転席側の前のクォーターウインドウ(三角窓)を割られ、そこから車内に手を入れて盗まれた痕跡が残っていたそうです。
さらに悲惨なことに、発見された際は車内に粉末消火剤がまかれ、見るも無残な姿だったとのこと……。なぜかというと、犯行に使ったクルマや現場に消火剤をまくのは、指紋などの検出を困難にするための常とう手段だそうです。
盗難「被害者」が罪に問われる場合も!?
今回のケースは、施錠していたクルマが盗まれました。一方で、例えばコンビニで買い物をする際に「ちょっとの間だから、まあいいか」と施錠せず、エンジンもかけたままのクルマが盗まれた場合、クルマの所有者や運転していた人が、罪に問われるケースがあるのを、知っていますか?
道路交通法では、クルマには「施錠の義務」があり、違反すると6000円の反則金と違反点数1点が科せられます。クルマは免許を取得しないと運転できないものなので、誰でも乗り逃げできるような状況にすること自体がNGなのです。
さらに言うと、免許を持たない未成年などがクルマに乗って走り出し、事故を起こして被害が発生した場合、クルマの所有者や直前まで運転していた人にも責任が及ぶ可能性があるのです(※)。何と恐ろしいことでしょう! ※資力の乏しい人が罪を犯しても、実際には補償が行われない可能性が高いため
盗難車が事故を起こした場合は、もちろん盗んだ犯人に責任が発生します。事故を起こして対人、対物の被害があれば、犯人が責任を持って補償をしなくてはなりません。ところが、場合によっては所有者の自賠責保険や任意保険が適用になり、被害者救済に当てられることもあるようです。※ケースバイケースで、カバーされる例が多いわけではありません
なお、私が話を聞いたプリウスを盗まれた人は、消火剤をまかれたせいで愛車が使えない状態になったものの、車両保険に加入していたので「全損」扱いでしっかり補償されたそうです。
クルマの所有者に全く非がなくても、運が悪く愛車が盗難されることはあるでしょう。完璧な自己防衛策はありませんが、自分ができることはしっかりやるのが基本。少なくとも、愛車を施錠せずに離れることだけは、しないようにしましょう。