自民党の次期総裁を巡る
本当の戦いはお盆明けから
とはいえ、石破首相が長く「自民党総裁・内閣総理大臣」のポストに留まることは難しい。
日本の政治史をひもとけば、自民党だけで与党を形成していたのは、1955年から1993年までの間だ。
1993年7月、当時の宮澤喜一政権が衆院選で敗北し、その翌月、野党連合による細川護熙政権が誕生して以降、今日まで1つの政党だけで与党を形成したことは1度もない。
それを考えれば、今回も、比較第1党の自民党は、ある政策では国民民主党と、別の政策では日本維新の会と…といったように、その都度、野党のどこかに協力を求め、国会運営をしていく以外に手はない。
しかし、「年収103万円の壁引き上げ」や「ガソリン暫定税率廃止」で政党間の合意を反故にされた国民民主、今年度予算に賛成し批判を浴びた維新は、すでに「石破政権には協力しない」との旗印を鮮明にしている。
参院選で躍進した参政党なら政策によっては組みやすいが、衆議院ではまだ3議席にとどまり補完勢力にはならない。最大野党の立憲民主党とは、石破首相と野田佳彦代表との相性の良さや政策的に共通項もあり、一時、「大連立」も噂されたが、小選挙区制を中選挙区制に戻さない限り候補者調整ができず、「大連立」など100%不可能だ。
そうなれば、国民民主党と日本維新の会に抱きつくしかないが、自民党の表紙を、これらの党が乗りやすい「顔」に変えない限り、部分連合も容易にはできなくなる。
あくまで自民党側から見れば、の話だが、石破首相には、関税交渉などがひと区切りついた時点で降りてもらわない限り、政策を前に進められないばかりか、次期衆院選の展望も描けなくなる。
ちょうど、お盆前後から9月上旬にかけては、時の宰相にとって「辞めどき」だ。過去を遡れば、安倍元首相は2020年8月28日、辞意を表明し、菅義偉元首相は2021年9月3日、岸田文雄前首相も去年8月14日に「次期総裁選には出馬しない」と表明している。
9月中旬以降は国連総会への出席があり、秋の臨時国会も召集されるケースが多いため、それまでに後継を選び、組閣も完了しなければならないからだ。
したがって、筆者は、お盆休みまでは、選挙疲れもあって与野党ともに様子見が続いたとしても、関税交渉に目鼻がつき、終戦80年の式典が終われば、自民党内で「ポスト石破は?」といった動きが表面化してくると見ている。
また、野党は野党で「どこと何を連携する?」といった駆け引きが始まるため、与野党ともに、これから本当の戦いが幕を開けることになるだろう。