今田美桜がキラキラの瞳で
恋する気持ち表現

 そこへアキラ(番家玖太)が走ってきて、手には何かを持っている。八木が見たことがある井伏鱒二の詩集だと思っていると、嵩が「返してくれ」と血相を変えて駆け込んで来た。

 詩集は嵩の愛読書。戦火のなかをくぐり抜け、いまも彼の手にあった。これが八木との関わりにもなったご利益のある詩集である。

 2カ月ぶりの嵩との再会にのぶの瞳はキラキラしている。今田美桜が恋する気持ちを瞳で表現していてすごい。照明の力かもしれないが。

 子どもたちの前でいちゃいちゃ(死語?)されても困ると思ったのか八木が「よそでやってくれないか」と言う。5カ月前は八木が気を利かせて席を外したが、いつだってそうはしない。公平な考え方である。

 のぶは自室に嵩を連れてくる。ここはちょっと前までトタン張りのあばら家だったとは思えない。家具も増えている。本棚やソファなどがすてきに配置されていた。半地下みたいな広い板張りの空間は、嵩たちがおでんでおなかを壊して鉄子に運び込まれた場所に似ている。角度によって印象が違うようだ。

 そこで落ち着いて語るふたり。蘭子(河合優実)が「月刊くじら」で記事を書き始めたと嵩が伝える。

 嵩は新聞社を辞めて東京に来ることにしたと伝える。辞めた理由は、地震のときに眠りこけていて取材ができなかった自分は記者失格だと思ったこと。それは建前で、のぶのもとに行きたい一心なのだ。

 地震のとき眠ってしまい記者に向いていないと思ったのは、嵩のモデルのやなせたかしの実話ではある。

 結果は同じなのだが、残った記録どおりでなく、いくぶん創作を交えていると、こうも印象が変わるものかと興味深い。やはり物事にはしっくりハマるところがあって。ほんの少しツボがずれたマッサージは気持ちよくないものだ。

 東海林は嵩に東京に行く使命を託す。

「逆転しない正義とは何か」
「何年かかっても何十年かかってもふたりでその答えを見つけてみい」

 性格も行動力も反対ののぶと嵩だが、根っこは同じものを持っていると東海林は思っていた。

 その話を聞いて、のぶは「ふたりで見つけようね」としみじみしていると、ご近所さんが醤油を借りに来た。ふたりが黙って見つめ合うと、誰かが邪魔しに来る。恋愛コントみたいなことが繰り広げられる。