熱中症とは、私たちの体の体温調節機能が正常に働かなくなり、体内に熱がこもってしまうことで起こる様々な症状の総称です。人間の体は、通常、汗をかいたり皮膚の血管を拡張させたりすることで、体内の熱を外へ放出し、体温を一定に保とうとします。しかし、気温や湿度が高い環境下で長時間過ごしたり、激しい運動をしたりすると、この体温調節機能が追いつかなくなり、体温が上昇しすぎてしまうのです。
このメカニズムにおいて、特に重要な役割を果たすのが「水分」と「ミネラル(塩分)」です。汗をかくことで体内の水分が失われるだけでなく、同時に汗には塩分をはじめナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムといった重要なミネラルも含まれています。
これらの水分とミネラルが欠乏すると、体液のバランスが崩れ、体温調節機能がさらに機能しにくくなります。ひどい場合には、めまいや吐き気、頭痛といった初期症状から、意識障害やけいれん、高体温といった重篤な症状へと進行し、命にかかわることもあります。
大量に汗をかいた状態で水だけを大量に摂取すると、体液中のナトリウム濃度が薄まってしまいます。 私たちの体は、このナトリウム濃度を一定に保とうとする働きがあるため、濃度が薄まると、これ以上体液を薄めないようにと、水分摂取を抑制したり、余分な水分を尿として排出したりしてしまいます。これが「自発的脱水」と呼ばれる現象です。いくら水を飲んでも、体が適切に水分を保持できない状態に陥ってしまうのです。
さらに、この状態が進行すると、「低ナトリウム血症」という重篤な状態に陥るリスクもあります。低ナトリウム血症になると、頭痛、吐き気、けいれん、意識障害といった症状が現れ、最悪の場合、命にかかわることもあります。特に、高齢者や腎機能が低下している人、また高温環境下で長時間活動する人などは、注意が必要です。