定番のスポーツドリンクは
万能ではない
では、スポーツドリンクを飲めば良いのでしょうか? 確かに、スポーツドリンクは汗で失われやすい塩分(ナトリウム)や、エネルギー源となる糖分も補給できるように設計されています。適度な運動の後や、体調が悪いときには有効な選択肢です。
しかし、日常的な水分補給として、スポーツドリンクが常に最適かというと、そうではありません。 特に注意したいのが、その糖分の量です。多くのスポーツドリンクには、かなりの量の糖分が含まれています。例えば、500mlのペットボトル1本で、角砂糖約10個分もの糖分が含まれている製品も珍しくありません。
普段あまり運動しない人が、喉の渇きを感じるたびにスポーツドリンクを飲んでいると、知らず知らずのうちに糖分の過剰摂取につながってしまいます。毎日大量に飲み続けると、「ペットボトル症候群(ソフトドリンクケトーシス)」と呼ばれる、急性の糖尿病のような状態を引き起こすことがあります。これは、糖分の大量摂取によって血糖値が急激に上昇し、体のだるさ、倦怠感、ひどい喉の渇き、多尿といった症状が現れるものです。
特に、運動習慣のない人や、すでに血糖値が気になる人、糖尿病予備軍の人にとっては、スポーツドリンクの安易な多飲は注意が必要です。手軽だからといって、スポーツドリンクに頼りすぎるのは賢明な選択とは言えません。
熱中症予防に重要な
「黄金バランス」とは?
「水だけではダメ」「スポーツドリンクにも落とし穴がある」となると、一体何を飲めばいいのか、迷ってしまうかもしれません。しかし、熱中症を効果的に予防するためには、ある「黄金バランス」を満たすことが重要であることがわかってきました。
その黄金バランスとは、「水分」「ミネラル(ナトリウムなど)」「糖分」、そして「タンパク質」をバランス良く摂取することです。実は、この「タンパク質」こそが、体液量を適切に維持し、暑さに強い体をつくるための鍵を握る重要な栄養素なのです。タンパク質は、体のあらゆる細胞や組織の材料となるだけでなく、血液中の水分量を保ち、体内の熱を効率的に放出する機能をサポートする働きがあることがわかってきています。