現場で言われた“魔法の7文字”で
失いかけた自信を取り戻せた

 ウーバーの仕事で「同じお客様」に配送することは稀だ。僕はこれまでに(出前館とあわせて)7600回以上の配達をしてきたが、同じお届け先へ再訪した回数は50回もない。けれど「同じ飲食店」には1時間の内に3回も足を運んだことがある。

 長くこの仕事を続けていることもあり、僕は店員さんに顔を覚えられたようだ。客として店に入った際、店員さんから「ウーバーさん。もう少しでお渡しできるので少々お待ちください」とアナウンスされたことが複数回あった。

 一匹狼で働いている印象の強いウーバー配達員。しかし、その実態は、店員さんと軽い雑談をするくらい、人間関係が構築されているケースがある。マックにスタバ、中華屋に海鮮丼屋など、僕はたくさんの飲食店の方々から好意的に接してもらっている。

「ウチで働かない?」「君なら大歓迎だ」

 このような嬉しい提案を計10回以上、複数の飲食店からいただいたことがある。メンテナンスを行っている自転車屋さんからも「ウチに来てくれ」と誘われたことがあった。

 自分という人間を評価してもらったことは大変嬉しい。だけど、残念ながら僕は世に言う「社会人」の働き方があまり得意ではない。組織特有の理不尽や上下関係、毎日同じようなサイクルや人間関係で働くことに、小さなストレスを積み重ねていく傾向がある。

 これに対してウーバーの仕事は、個人プレーが基本スタンス。さらに自分の好きなときに働き、好きなときに休むことができる。もちろんサラリーマンと比べて、安定力や経済力は大きく劣るが……。時間や自由度に強みのあるウーバーの「働き方」は、自分の「生き方」と完全にマッチしていた。だから僕は迷いながらも、飲食店からの誘いをすべて断っている。

 その一方で、各飲食店からの魔法の言葉により、僕は自分という存在に「自信」を取り戻すことができた。

 この仕事を始めたキッカケは不当解雇だった。僕が勤めていた運送会社ではサービス残業が恒常化しており、これに異議を申し立てたところ、中途入社4年目を迎える頃に突如「クビ」を宣告された。