ワゴンっぽいSUVであり、
SUVっぽいワゴンでもある「いいとこ取り」
大容量リチウムイオンバッテリーを床下に配置したPHEVのEV走行可能距離は89km。PHEVには既存モデルに対して減衰力の向上と摩擦の低減を図ったAVSが装備されており、乗るとその効果が感じられる。PHEVならではのリアコンフォートモードを選択すると乗り心地がソフトになり、しかも高速走行時でも抑えが効いている。この味付けは絶妙である。
DRS(後輪操舵システム)にも70km/h以上での一定の条件下で同相制御を強めた独自のセッティング施されている。コーナリング時の安定感が増し、後席での横Gが薄まったように感じられた。こちらもPHEVのほうが制御の効果がよりわかりやすく、俊敏な回頭性と優れた操縦安定性を巧みに両立していた。
パワートレーンの完成度は高い。HEVはフロントモーター出力を5割増としたことで、人や荷物を載せて重くなっても不満なく加速できる。PHEVは、モーターならではレスポンスやパワー感と優れた静粛性により、ロングドライブでも余裕を持って走れる。
クラウン・エステートはワゴンっぽいSUVであり、SUVっぽいワゴンでもある。その価値はSUVしすぎていない点ではないか。クラウンの場合、車高が高くなったといってもそれほどのレベルではない。一般的なSUVの高い視線や地上高に抵抗を感じる人にとって、ちょうどよく感じされるはずだ。まさしく“いいとこ取り”である。
そのうえでエステートは優れたユーティリティはもとより、新世代クラウンの価値である斬新なスタイリング、上質な車内空間、最新テクノロジーを全身にまとっている。4タイプの個性の中でもエステートには、とりわけ強い主張を感じる。
(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/横田康志朗)