3000ドル超え「金相場」相互関税で追い風続く、トランプ政策の消えない“不透明感”が材料にPhoto:PIXTA

金価格は年明け以降上値を追い、1月末以降最高値更新を重ねている。ウクライナやガザを巡る地政学リスクがくすぶる中、トランプ関税への不透明感が支援材料だった。米国の相互関税発表でも先行きの不透明感は解消されず、金相場への追い風は続きそうだ。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

地政学リスクの高まりを受けた
安全資産買いが支援材料に

 金相場(現物、出所:LSEG)は、2024年12月中旬に1トロイオンス当たり2600ドルを下回って1カ月ぶり安値を付けるなど、11~12月はややもたついた。

 しかし、その後、今年1月中旬には2700ドルを回復し、1月末には2800ドルを突破、2月上旬には2900ドル、3月中旬には3000ドル、3月末には3100ドルと上値を切り上げていった。

 今回、本稿ではやや軟調に推移した昨年12月中旬ごろから史上最高値の更新が相次いだ4月初めまでの金相場の変動を振り返る。

 12月18日は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控えて、持ち高調整の売りから金相場は続落していた。

 FOMCでは、米連邦準備制度理事会(FRB)による3会合連続の利下げが決定されたものの、25年の想定利下げ回数を従来の4回から2回に引き下げたことが嫌気され、金の下落幅は大きくなり、19日には一時2582ドルまで下落した。

 20日は、11月の米個人消費支出(PCE)価格指数が市場予想を下回ったことで、18日のFOMCを受けて強まっていた25年の利下げペース鈍化観測が幾分和らぎ、金は買い戻された。

 年が明けて25年1月2日は、地政学リスクの高まりを受けた安全資産買いが金相場を支えた。1日にロシアがウクライナの首都キーウを空爆、2日にイスラエルがガザを空爆したことや、トランプ次期米大統領の就任を控えることが投資家のリスク回避姿勢につながった。

 13日は、前週末の米雇用統計で景気堅調が示されて米市場金利やドル相場の上昇につながったことが改めて嫌気され、金は下落した。

 米国の連休明けの21日は、トランプ米大統領が就任直後の関税引き上げを見送ったことを受けて、米市場金利やドル相場が低下し、金相場には追い風になった。米新政権の政策への警戒感が金を押し上げたとの指摘もあった。

 27日は下落した。中国新興企業のディープシークによる生成AIが安価で高性能との見方が台頭し、これまでAIブームをけん引してきた米ハイテク企業の優位性への疑念から投資家のリスクオフ姿勢が強まったことで幅広い資産への売り圧力が金にも波及した。

 30日は、トランプ米政権が2月1日より中国・カナダ・メキシコに対する関税引き上げ意向を示す中、先行き不透明感の高まりから金は買われ、3カ月ぶりに史上最高値を更新した。欧州中央銀行(ECB)の利下げ等を受けた欧州債の利回り低下に連動して米債利回りも低下したことも金買い材料との指摘もあった。31日には2800ドルを上回った。

 次ページでは2月以降の相場を検証しつつ、今後の先行きを予測する。