巨人復権 大NTTの野心#10Photo by Reiji Murai

NTTドコモの携帯電話事業の苦戦が続いている。その一方で、NTTデータグループの営業利益の水準は劇的に改善する見通しだ。両社を完全子会社化したNTTは、ドコモの“本業”の不振をデータグループが補完するグループ経営を完成させつつある。特集『巨人復権 大NTTの野心』の#10では、最前線の取材を通じてNTTグループの新たな経営・財務戦略に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

ドコモは値上げで7~9月期は顧客流出!
9月のiPhone17商戦も響いたか?

“値上げ”から最初の四半期は、競合他社に負けを喫したようだ。

 ダイヤモンド編集部が入手した内部データによると、電話番号を変えずに携帯キャリアを乗り換える「番号持ち運び制度(MNP)」で、NTTドコモの2025年7~9月期の契約は、転出超過(MNPマイナス)だったことが分かった。

 ドコモがMNPのマイナスに転落するのは4四半期ぶり。もともとドコモは、KDDIやソフトバンクら競合との顧客の争奪戦で負け続けてきた歴史があるが、24年度に入って販売促進費を大幅に積み増して営業を強化。これにより、24年10~12月期から25年4~6月期は3四半期連続でMNPのプラスを確保したところだった。ところが、7~9月期は再びマイナスに転落した格好だ。

 6月5日から新料金プラン「ドコモMAX」の発売を開始して事実上の値上げをしたことで、契約が流出したとみられる(詳細は、本特集#2『【独自】ドコモ、実質値上げの「新料金プラン」で再び顧客が流出!内部データで判明した苦境の真相、NTTの“稼ぎ頭”のジレンマとは?』参照)。

 特に9月は、米アップルの「iPhone17」シリーズ発売が重なったが、ドコモではオンラインで契約情報を書き換える「eSIM」が開通しづらくなるシステム障害が発生。ドコモの内部では、これも9月の商戦に影響した可能性を指摘する声もある。

 NTTの稼ぎ頭であるドコモの本業の苦戦はグループの業績に響く。だが、その一方で、9月30日付で完全子会社化したNTTデータグループの今期の業績は大幅増益が見込まれている。

 次ページでは、ドコモの7~9月期のMNPがマイナスに陥ったことの内実を明らかにするとともに、携帯電話事業の低迷が長期化する可能性を示す。その上で、NTTデータグループの好調によってドコモの不振をカバーする財務構造を解明し、両社を傘下に収めたNTTのグループ経営の強みに迫る。