教育・受験 最前線#22Photo:PIXTA

定員割れが続く歯学部を運営する学校法人は、経営も厳しいところが多い。歯学部のある私立大学を運営する15学校法人のうち、7学校法人は直近5年間が全て赤字(経常収支差額)だ。経営の悪化は教育の質にも影響する。連載『教育・受験 最前線』では、全国歯学部の実力と経営にランキングで切り込む「歯学部ランキング」を複数回にわたってお届けする。第4回は歯学部のある私立大学を運営する15学校法人を対象に、「稼げない大学」ランキングを作成した。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

学費最安の明海大と朝日大が
「稼げる大学」のツートップ

 人気低迷が長らく続いた歯学部は学生が集まらず、私立大学では過去5年間平均データで17歯学部のうち11歯学部が募集人員に対して定員割れしている(『歯学部「入学定員割れ」ワーストランキング【全国私立17歯学部】2位は鶴見大学、1位は?歯科医師不足懸念で入りやすい歯学部は“狙い目”か』参照)。学生が集まらないということは、収入の柱である入学金や授業料が集まらない。歯学部のある私立大を運営する15学校法人の財務を見ると、企業で言う経常利益に当たる「経常収支差額」(経常収入-経常支出)が過去5年間全て赤字になったところが7学校法人にものぼる。

 ダイヤモンド編集部では、歯学部のある私立大を運営する15学校法人を対象に、過去5年間の財務データに基づく「経常収支差額比率」ワーストランキングを作成した。経常収支差額比率(経常収支差額÷経常収入)は、企業で言う売上高経常利益率に相当する「稼ぐ力」を測るもの。このワーストランキングというのは、「稼げない大学ランキング」を意味する。

 ワーストランキングの最下位、つまり最も稼ぐ力を持つ学校法人は明海大学、これに朝日大学が続いた。

 この2大学は姉妹校で、私立歯学部において学費最安ツートップである。学費を抑えることで学生が集まり、入学定員(募集人員)は埋まっている。定員が埋まっていても学費が安いので、教育活動での収支は苦しい。明海大学は過去5年間のうち4回赤字になり、朝日大学は過去5年間全て赤字だ。

 しかし、この2学校法人は教育活動外で大きく稼いでいる。教育活動と教育活動外の各収支を合計した経常収支差額では、2学校法人とも過去5年間全て黒字。どちらも黒字幅が大きく、「稼げる大学」としてもダントツのツートップである。

 教育活動外での収入とは「受取利息・配当金」、つまり資産運用での稼ぎだ。2学校法人は運用資産を多く持っている上に、運用上手で運用利回りが高い。

 明海大学の24年度実績で見ると、入学金や授業料、補助金などの教育活動で92億円の収入があり、人件費や教育研究経費などの教育活動の支出が103億円。教育活動収支差額では11億円の赤字だ。一方で教育活動外では受取利息・配当金からの収入が72億円。教育活動外での支出はゼロである。結果、経常収支差額は61億円の黒字だ。

 資産運用で稼げているから、学費最安を続けられる。明海大と朝日大は24年度からはさらに、歯学部の入学初年度授業料を従来の190万円から95万円と半額に減額してみせた。

 学校法人は営利法人ではないので、利益を出すことが目的ではない。目的は、教育と研究である。それでも利益を出すことは重要だ。

 稼ぎが多い学校法人は、教育と研究に資金を投じて質向上を図れ、質の良い学生を集めやすくなる。その逆しかりで、稼げない学校法人は教育と研究に十分な資金を投じられないため質を維持できなくなり、学生が集めにくくなる。

 では、「稼げない大学」はどこなのか。次ページでランキングを一挙公開する。