ANA JAL危機 過去最高業績の裏側#12Photo by Yuito Tanaka

北海道と本州・九州を結ぶ航空会社AIRDO(エアドゥ)。他社同様、コスト増と単価の下落により国内線は厳しい状況が続いている。打開策として2022年10月、ソラシドエアとの共同持ち株会社設立を発表。整備の一元化やスケールメリット拡大により収益性向上を目指しているが、協業には課題も多い。特集『ANA JAL危機 過去最高業績の裏側』の#12では、エアドゥの鈴木貴博社長が、低迷する現状の打開策、そしてソラシドエアとの協業の「足かせ」について語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

「経常利益の目標は達成が難しい」
国内線の収益性低下が課題

――2022年に発表した中期経営計画では26年度に経常利益90億円を目指すとありましたが、25年度の予想経常利益は12億円です。当初予想より収益性が低下しています。

 コロナ禍に乗客が蒸発して債務超過が目前に迫る状況になり、22年10月に経費の削減や経営資源の効率化などを目的に、ソラシドエアと共同持ち株会社のリージョナルプラスウイングスを設立しました。

 その際に発表した26年度の売上高目標1000億円は、24年度に超えています。乗客数を増加させるために運賃を下げたことが奏功しました。

 しかし、営業費用が大幅に増えたことで経常利益の目標は達成が難しい状況です。特にエンジン関係のコスト増加が大きい。エンジンの整備は海外でないとできないので、支払いはドル建てです。われわれは国内専業なので、ドルの収入がない。そうすると為替の影響を売り上げで相殺できないため、コストが増加している。

 米ゼネラル・エレクトリック、米プラット・アンド・ホイットニー、英ロールス・ロイスの3社が世界中の航空機のエンジンの大部分を製造していることもあり、エンジンの整備をできる会社は限られている。

 それ故に交渉も強気ですから、毎年3%ずつとか整備費用の値上げをしてくる。

――それはなぜでしょうか。

 足元を見られているのだと思います。「他に頼める会社はないだろう」と。エンジンメーカー以外の会社に整備を頼めるかと言われれば、多分できない。

 さらに彼らには他の航空会社のエンジン整備の仕事もあるので、順番待ちになるわけです。日本の会社みたいに必ず期限までに仕上げてくる相手でもない。エンジンが戻ってくると想定していた時期までに戻ってこないこともある。コストは、自分たちではどうしようもない事情で増えている側面もあります。

――国内線の収益性低下を解決するために国土交通省は有識者会議を開催しています。会議では国内線が「供給過多」になっているとの指摘も出ています。

 国交省は解決策として、時間帯ごとの便数調整やコードシェアの活用で需要に応じて供給量を適正化する案を挙げていました。一つのアイデアだと思いますが、それらの策が各路線に与える影響は、細かく分析しないと分からない。

 エアドゥはANAと既にコードシェアを実施しています。なので、追加で何をすればいいのかよく分からない。コードシェアのわれわれの比率を上げれば、増収策にはなるのかもしれない。

――コードシェアで販売するエアドゥ側の座席数を増やした方が、ANAに買い取ってもらうよりも収益性は高まるのでしょうか。

 そうだと考えています。「1座席で何円」と決めてANA側に座席を卸しているので、買い取った座席を幾らで売るかはANAの采配です。われわれには卸値の分しか入ってこない。自社で販売する席扱いにすれば、少なくともANAがわれわれから仕入れてプラスアルファで運賃を上げている分ぐらいは、利益として取れるはずです。

 しかしそうなった場合、今以上にわれわれの座席販売力が問われるわけです。

――コードシェアを減らしていきたいとお考えなのでしょうか。

 路線によります。全部エアドゥのマーケットで売れるものなら、そうしたいです。

収益力の低下にあえぐ国内線事業。エンジン整備のコスト増など、自社では解決が難しい要素も多い。共同持ち株会社を設立したソラシドエアと協業を深めることで、難局を乗り越えることはできるのか。次ページでも鈴木社長が赤裸々に内情を語る。