ANA JAL危機 過去最高業績の裏側#4本田俊介・フジドリームエアラインズ社長Photo by Yuito Takana

中部地方を拠点とする地域航空会社、フジドリームエアラインズ(FDA)。独自の路線戦略で全国に展開してきたが、コロナ禍以降はコスト増とビジネス需要の減少で窮地に追い込まれている。そうした中、日本航空(JAL)出身の本田俊介氏が社長に就任。FDAはJALとのコードシェア拡大など連携を一段と強化している。特集『ANA JAL危機 過去最高業績の裏側』#4では、その狙いと成長戦略、業界再編の可能性を本田社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

独自路線を行くFDA
近年はJALと関係強化

――コロナ禍を経て、国内線事業はどのように変化しましたか。

 創業時は航空機2機から始まりましたが、コロナ禍前に16機まで増え、一気に規模を拡大しました。

 ただコロナ禍で人の動き方が大きく変わった。緊急事態宣言が明けた後、航空業界では国内線のビジネス客が2割減り、一度に30~40人が搭乗する団体旅行などのご年配の方々の旅行も激減しました。この二つが大きな要因でFDAの需要構造が大きく変化しており、苦戦しているのが実際のところです。

 費用の面では燃油価格は高止まりし、コロナ前は1ドル110円台だったのが、現在は150円台です。航空機の部品は全て海外からの輸入品なので、円安によるコストがコロナ禍前より3割以上上昇しています。

――その現状をどう改善していくつもりですか。

 収入を増やすことが必要です。そのために単価を上げ、移動需要を創出していかなければならない。

 単価アップについては、残席数に応じて運賃が変動するレベニューマネジメントの仕組みを強化したい。まだ日本航空(JAL)・ANAレベルには追い付いていないので、徹底して機会損失をなくしていく。

 FDAは「地参地翔」を掲げ、日本の「地」方に「参」画し、地域と共にネットワークを拡大してきた会社です。自治体や地域企業と連携しながら地域との結び付きを強固にし、航空需要を喚起していくべきだと考えています。

――需要喚起に成功している路線はありますか。

 長野県の松本と北海道の札幌を結ぶ便です。この便には多くのインバウンド客が乗っているので、平日でも座席利用率が高い。むしろここはFDAが仕掛けずとも、勝手にインバウンドの方が動き始めている。この便をモデルにしながら、他の路線にも乗っていただけるようにしていく。

 先日、大阪観光局理事長の溝畑宏氏が「大阪をゲートウェイにする」と宣言し、大阪から日本の地方を観光してもらうプロモーションを始めました。われわれが拠点としている名古屋や福岡も、インバウンドの玄関口になっている意味では大阪と同じです。

 2025年の冬ダイヤからは福岡=花巻線、福岡=仙台線も新規開設しました。FDAに乗って地方に行ってもらう仕組みを整えているところです。

――インバウンドの需要喚起は「焼け石に水」だと考え、座席の供給量を減らす方向に動いている航空会社も多いですが、そう考えていないのはなぜですか。

 多くの航空会社は、既に基礎需要がある場所に路線を引いて事業をつくってきた。しかし、われわれは基礎需要が小さな地方に路線を引いてきた会社です。

 そもそも人口流動が少ない場所で事業をしているので、需要を増やしていくモチベーションが非常に大きい。

 他社ではインバウンド比率は3%ほどかもしれませんが、われわれはその比率を約10%まで高めていきたい。減ってしまった平日の需要を埋めるためには、それくらいを目標とする必要がある。

――FDAが所属する鈴与グループは、スカイマークの株式を25%ほど取得しています。今後スカイマークとの連携を強めて収益性を向上させる考えはありますか。

 機材や就航している路線も違う。われわれはローカル路線が中心ですし、スカイマークにとってはあまり組むメリットはないと思います。空港のグランドハンドリング業務の共通化で効率化をしていくことはなくはないと思いますが。

――FDAから見て協業するメリットは大きくないのか。

 スカイマークと連携するとして、例えばコードシェアをやるとしても、それは既にJALと実施している。

――コロナ禍からFDAはJALとの連携を強化しています。なぜでしょうか。

JALとは10年以上前から提携をしていたFDAだが、全便のコードシェア化など近年ではより密な関係を築いている。また、今年6月に社長に就任した本田氏もJAL出身であり、“赤組”カラーが強まる一方だ。次ページではその理由と地域航空会社としての成長戦略を本田社長が語る。