Phoho by Koyo Yamamoto
事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)から復活した曙ブレーキ工業を2025年1月から率いるのは、元三菱自動車副社長の長岡宏CEO(最高経営責任者)だ。8月に公表した中期経営計画では、「利益倍増計画」をぶち上げた。ADRに陥った要因でもある「売り上げ至上主義」からの脱却も肝となる。連載『自動車 “最強産業”の死闘』の#20では、中計での利益倍増計画について、長岡宏CEOが明かした。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
日産から三菱自副社長に転じ、曙ブレーキへ
危機の元凶「ボッシュ北米事業買収」を教訓に経営改革
――私的整理の一つで、裁判以外の紛争解決である事業再生ADRが、2024年6月に終わりました。その後、25年1月にCEO(最高経営責任者)に就任しました。
私が日産自動車にいた05年ごろから、ブレーキも含めたシャシー設計の責任者を務めており、曙ブレーキ工業と一緒に仕事をしていました。日産を経た後、19年に三菱自動車に移り、24年に(副社長を)退任しました。
次の仕事を模索している中で、曙ブレーキの筆頭株主であるジャパン・インダストリアル・ソリューションズからお話を頂きました。事業再生ADRを抜けたけれど、「本当に強い体力にするための再構築」を行いたいとのことでした。
曙ブレーキとは浅からぬ縁なので、復活のために私の力を使えるのであればぜひやらせてもらいたいということでCEOになりました。迷いはありませんでした。
――なぜ曙ブレーキは、19年に事業再生ADRを利用しなければならないほど追い込まれたと考えていますか。
(09年の)独・ボッシュの北米ブレーキ事業買収が大きな転換点でしょう。この買収は、これからお話しする内容にも深く関わってきます。
(同事業の買収により)著しく売上高は上がりましたが、赤字事業も含まれていました。生産量も増えましたが、オペレーションが乱れ、例えば、納期に間に合わせるために(船便や陸便ではなくコストがかかる)空輸するといったこともしていたようです。こうしたことを行っているうちに、財務状態が悪化していきました。これが、(事業再生ADRに陥った)一番の原因です。
8月に公表した2025~27年度中期経営計画では、24年度の営業利益31億円を、27年度に80億円とする計画としている。一体どのように達成していくのか。また、事業再生ADRに陥った一因である「売り上げ至上主義」からの脱却も目指す。次ページ以降では、長岡CEOが「利益倍増計画」の全貌を激白した。中国の完成車メーカーとの付き合い方も明かした。







