今年6月、江蘇省某市から「投資誘致ミッション」が来日した。日本各地を行脚し、東京では大手町に会場が設けられた。2000年代に盛隆を見せた中国の地方都市による対中投資セミナーの開催も、最近はすっかり珍しくなった。
当日、その壇上に立った中国側の代表は「中日関係における困難な局面、その打開の入り口は見えていない」としながらも、自動車部品メーカーの集積を目指していると明かし、来場した日本企業に向けてこう呼びかけた。
「エンジンが欲しい。これさえ出揃えば、自動車産業チェーンのすべてが構築される」
エンジンだけではない。日本の中小企業の持てる技術は、GDP世界第2位の座に君臨する経済大国にとっても、垂涎の的であることには変わりはないようだ。
100人超を収容する会場で、その座席の8割(もちろん中国側の関係者も多いが)は埋まっていた。かつてあったような「熱気溢れる会場」とはかけ離れた雰囲気だが、“このご時世”にこれだけの集客は、それでも情報収集に余念がない日本企業の中国への関心が垣間見えるものでもあった。
東アジア全16ヵ国連携構想
「RCEP」で競争はいっそう激化
昨今、TPPやRCEPなどの連携構想が生まれるなかで、製造業の舞台も国際化が加速している。筆者は「夜行便でジャカルタに戻る」という経済産業省の岩田泰氏と、京成線日暮里駅で面会した。同氏はインドネシアの首都ジャカルタにあるERIA(東アジア・アセアン経済研究センター)に出向中だ。
ERIAは東アジア経済統合の推進を目的として、2007年の第3回東アジアサミットの議長声明等を受け、翌年正式に設立した組織。このERIAにはASEAN10ヵ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)と日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドの6ヵ国、総計16ヵ国が参加、これらの国々に対しRCEPの必要性を説く提言を行っていた。