伊藤忠商事の岡藤正広会長は、経営手腕や発信力で存在感を放つ。成長を続けるための考えや、総合商社が将来生き残るために必要な改革とは。特集『伊藤忠 三菱・三井超えの試練』の#9では、希代の経営者に「次代の商社論」を聞いた。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)
伊藤忠の総合商社「3冠」の立役者の本音
急にトップ退任したら「業績は2割下がる」
――総合商社が史上最大の利益を出す一方、求められるニーズや働き方がどんどん変わっています。一方で「商社は中抜きだ」とやゆされたりメーカーが商社の業務を単独でやったりする動きもあります。
昔からメーカーは商社の機能をそれほど評価せず、リスクヘッジのように考えていた。バーンとええもん作ったら商社に全部まとめて(持って)くる。与信の心配も商品管理も必要ない。商社を利用していたわけや。
ただ、だんだん大口のお客さんが出てくると、商社を経ずにじかでやりとりする。商売が大きくなると、単にコストがかかるだけの商社は邪魔だ、と切られる宿命だった。
われわれはその商社無用論の苦しみから新しいビジネスモデルを築いてきた。苦労しながらどんどん機能を身に付けたから、製造機能も何もないけども、商社はここまで成長して生き延びてきたんじゃないかなと思う。
次ページでは、デジタル化社会で商社が生き残るための秘策や伊藤忠の経営トップ交代の考え、商人に必要な素養を聞く。