東京電力ホールディングスにはバブル崩壊による就職氷河期はなかったが、「東電版・就職氷河期」が2000年代序盤にあった。彼らの華麗なる転職先と、東電“居残り組”との年収格差を探った。特集『どの世代が損をしたか?氷河期部長&課長の憂鬱 出世・給料・役職定年』の#11では、それぞれの年収相場の実額と共に、明暗をお伝えする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
東日本大震災後に続々転職
総合商社や大手コンサルへ
電力業界最大手、東京電力(当時、現東京電力ホールディングス〈HD〉)にはバブル崩壊に起因した俗にいう就職氷河期はなかった。
しかし実は別の要因で、採用を絞った時期が2000年代序盤に存在する。
11年の東日本大震災前までは経団連会長を輩出するなど敵なしの“大東電”時代にあって、彼らは「その世代の学生の上澄みの上澄みを集めた」(ある東電OB)スーパーエリートなのだった。
だが、福島第一原子力発電所の事故後に周辺業界へ転職したのも彼らが中心であり、そして彼ら以下の世代も続いた。
総合商社や大手コンサルティング会社などに華麗なる転職を果たした彼らも、東電HDに残っている同世代も、大学卒業のストレート入社だった場合は現在、課長級か一般職最上位あたりだ。
大震災後に大幅な年収カットがあった東電HDだが、「徹底的なコストカットと引き換えに、実は大震災前ぐらいの給与水準に戻ってきている」と複数の東電HD関係者は語る。
ただ足元の年収はもちろん、「この約10年の総年収では転職して正解」と話す東電OBもいる。
震災後に他社に飛び出た元東電社員と、今も残る社員はどちらが得をしているのか。そもそも、どのような会社に転職していったのか。具体的な役職や待遇の実額とともに、徹底比較してみよう。