祈祷師は地域医療の
エントリーポイント

街中にある祈祷師の広告。スワヒリ語で「医師が幸運をもたらす」というような趣旨のことが書いてある Photo:DOL

 タンザニア政府は専門的な医療知識をもたない祈祷師が、地域医療の一端を担っていることについて、排除することはない。むしろ、彼らの協力を仰ごうとしている。

 タンザニア社会保健省は、「メンバー・デイ」という祈祷師を集めた会合を定期的に開催している。そこで、HIV/エイズや結核、マラリアなどの感染症に関する最新の情報を祈祷師に伝え、全員に政府からの認定証を交付している。「祈祷師は地域の医療のエントリーポイントとして重要だ」(テメケ地区クリニカルオフィサー)という認識があるからだ。

 最近では、政府は祈祷師に小さな容器を渡している。結核が疑われる患者が来たら、患者の痰を容器に入れて、病院に検査に出すように指導しているのだ。そこから、結核患者を見つけ、病院で治療させるという仕組みだ。

祈祷師サマータの認定証 Photo:DOL

 また、若い世代を中心に、祈祷師を信用せずに、すぐに病院に行く人も近年増えているという。しかし、依然として地域特有の祈祷師に対する信頼は根強く、テメケ地区だけで600人近くの祈祷師が存在するという。

世界で140万人が結核で死亡
東南アジアとアフリカが多い

 世界では、今でも結核で苦しむ人は多い。2011年、世界の結核罹患率は約870万人で、そのうち13%がHIV感染者だ。そのうち、約140万人(約99万人がHIV陰性、約43万人がHIV陽性)が死亡している。アフリカ地域は世界で結核と診断された件数の24%を占めており、東南アジアの41%に次ぐ(右のグラフ)。

 ところが、罹患率を人口10万人当たりの数で比較してみると、アフリカの状況が世界でも最悪レベルにあることが分かる。

 アフリカ地域は10万人あたりの罹患者率は262人で、東南アジア地域の189人を逆転する。死亡率は両地域ともに26人だ。

 世界の結核患者数の減少については、ミレニアム開発目標(MDGs)のゴール6で「結核蔓延の阻止をする」という目標が設定されている。右上の表にあるとおり、ここ数年で罹患率や死亡率は低下しており、目標は達成済みだ。そうはいうものの、依然としてアフリカ地域にとって大きな社会問題として存在するのだ。

 ちなみに国別で比較してみると、タンザニアでは2011年、10万人あたりの結核罹患者数は169人だ。米国4.1人、カナダ4.7人、オーストラリア6.3人、フランス9.3人、日本17.7人と比較するとその多さがわかるだろう。