Photo by Tadayuki Yoshikawa
米ボーイングの最新大型機777Xの納入が、ついに2027年へと再延期された。ANAホールディングスは同機を次世代フラッグシップとして導入を予定している。7年遅れの大遅延は、同社の国際線戦略の根幹を揺るがしかねない。過去最高の業績を更新した一方で、機材計画の遅延という“見えないリスク”が迫る。特集『ANA JAL危機 過去最高業績の裏側』の#13では、ANAを覆う静かな危機の正体を明らかにする。(Aviation Wire編集長 吉川忠行)
ボーイングの納入遅延
ANAの次世代機計画に大打撃
全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングス(HD)が、2026年3月期第2四半期決算で売上高が過去最高を記録した。旺盛な訪日需要に加え、日本発需要が徐々に回復し、コロナによる打撃を打ち返しつつある。一方で、今後の国際線戦略の要となる次世代フラッグシップ機の導入計画が大幅に遅れている。14年に発注した米ボーイングの最新大型機777Xは、当初の引き渡し予定だった20年から7年遅れとなることが見込まれており、初受領は早くても27年1~3月期になる見通しだ。
777Xの納入開始が遅れるのではないかとの見方が業界内で強まる中、ボーイングは25年10月末に初納入が27年にずれ込むと正式に発表した。米国連邦航空局(FAA)による型式証明の取得が遅れていることが主な要因で、開発発表した13年に設定された20年の納入開始予定から数えて7年の遅れとなる。
777Xは旅客型2機種と貨物型の計3機種で構成され、ANAは旅客型「777-9」を20機発注後、うち2機を貨物型「777-8F」に発注変更した。現在長距離国際線を中心に投入している「777-300ER」の後継が777-9で、胴体がやや長くなり座席数を多く設定できる。
ボーイングは777Xの納入延期を繰り返してきた。まず21年に延期され、2件の墜落事故が起きた小型機737 MAXの認証プロセスで問題となった点を踏まえて22年に再延期。21年に入ると23年後半に後ろ倒しされた。その後25年、26年と納期が延び、今回の発表で27年となった。もはや誰も正確な納期を予測できない状況で、FAAの認証作業が順調に進むことを祈るしかない。
次世代フラッグシップ機である777Xの納入遅延は、ANAの国際線戦略全体に影を落とす致命傷になりかねない。また、問題は機材の受領の遅れだけではなく、ブランドイメージにも直結する。ボーイング機の納入延期は世界各国のエアラインにも影響を及ぼすが、ANAにはそのリスクをカバーできていない戦略上の課題もある。
コロナ禍が明け、国際線では世界各国のエアラインが拡大競争を繰り広げている。ANAはその波に付いていくことができるのか。







