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ホルムズ海峡の緊張が高まり、石油やLNG(液化天然ガス)の供給不安が再び世界を揺さぶっている。エネルギー安全保障が問われる中、総合商社は次の電源として「地上の太陽」と呼ばれる核融合への関与を強めている。米国では核融合スタートアップへの巨額投資が続き、実証炉建設も動きだした。日本の商社も出資や技術連携で参入し始めた。だが、その戦略は大きく異なる。技術エコシステム、サプライチェーン掌握、慎重な機会待ち――。核融合を巡り、商社の思惑が浮かび上がってきた。長期連載『クローズアップ商社』内の特集『三菱商事「最強伝説」の終焉』の#8では、核融合という次世代エネルギーを巡り、住友商事と三井物産が描く異なる戦略と、その中で三菱商事がどう動くのかを読み解く。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
核融合は2040年代に商用化!?
住友商事が描く「フュージョンエコシステム」
核融合は2030年代に実証、40年代に商用化のビジネスになる――。
軽い原子核同士を合体させて膨大なエネルギーを生む核融合。太陽が輝く源であり、人類の“夢のエネルギー”とされる次世代技術の商機を逃すまいと総合商社も動きだし、戦略の違いが鮮明になりつつある。
ライバルの総合商社よりも一足早く、22年から核融合への出資を始めた住友商事。26年2月に開催した核融合事業の戦略説明会で、同社の推進チームが強調したのは、冒頭で触れたターニングポイントの時間軸だ。そして、核融合発電を誰も実現できていない段階でも、現実のビジネスになり得ると力説した。
住友商事の戦略の特徴は、核融合発電の完成を待たずに収益化を図る「フュージョンエコシステム」構想にある。核融合開発の過程で生まれる派生技術を医療や産業用途で先行して事業化し、その収益と知見を発電開発へ還流させるプランだ。
実際に、住友商事が出資・提携するスタートアップはライバルよりも多岐にわたる。
例えば25年4月に提携した核融合スタートアップの米シャイン・テクノロジーズは、核融合技術から派生した医療用放射性同位体の製造技術などを持つ。26年3月には同社に出資して提携関係を強化し、がん治療に用いられるルテチウム177の供給では、創薬支援子会社の住商ファーマインターナショナルとも連携し、日本やアジアの製薬企業への仲介を担う。
また22年に出資した米TAEテクノロジーズは核融合炉の開発を目指しているが、核融合向け高速スイッチング電源の技術応用を検討中だ。23年に出資した英トカマク・エナジーとは、高温超電導(HTS)磁石の産業利用を目指している。
つまり、最終的なゴールである核融合発電という巨大なリターンが実るまで待つのではなく、要素技術を社会実装して収益化しながら産業基盤を築く戦略だ。
核融合ビジネスの覇権を狙い動きだした総合商社たち。次ページでは、住友商事や三井物産、三菱商事の“三社三様”の戦略を深掘りしていく。







