投資ファンドが地方小売業の再編を加速しようとしている。

 名古屋鉄道から2005年に食品スーパー子会社パレを買い取ったフェニックス・キャピタルは、08年6月、和歌山県を地盤とする有力スーパーのオークワに全持ち株を売却した。

 06年11月に北海道のディスカウントストア(DS)、カウボーイの再建支援に乗り出したゴールドマン・サックス証券は、保有する約35%の株式の大半と貸付債権を福岡県のDS、トライアルカンパニーに売却することを決めた。

 直近の事業年度での売上高はパレが336億円、カウボーイが430億円。大手小売業の再編は一段落したが、売上高1000億円未満の地方小売業ではこれからが本番。その触媒としてファンドや投資銀行の動きが活発化しているのだ。

 不動産投資事業で急成長したリサ・パートナーズは06年9月、第1号の企業投資ファンドを組成し、計9社に218.5億円を投資したが、DSのダイレックス(旧サンクスジャパン、佐賀県)など半数以上は売上規模数百億円の地方小売業。

 この規模では、たとえ株式を上場したとしてもその後の成長を望むのは難しく、「エグジット(出口)としては、同業他社への売却が中心となるだろう」とリサ側でも明言している。

 同社は7月29日、第2号の企業投資ファンドを立ち上げた。1つ目の投資案件として決まったのは、やはり地方スーパーのハローフーヅ(愛知県、売上高405億円)。今後、ファンドの総額を300億円にまで拡大する予定だが、その多くが地方小売業に振り向けられるものと見られる。

 地方銀行の不良債権処理はこれからが本番でもあり、地方小売業のM&A案件が今後、一気に増えそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 田原寛)