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フィリピンのマルコス大統領は3月24日、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー供給不安を受け、「国家エネルギー非常事態」を宣言した。原油高とペソ安が重なる中、インフレ圧力は強まり、中央銀行は緊急会合を開いたが、政策金利は据え置いた。景気下支えを優先する姿勢は市場に安心感を与えず、経済と政局の不透明感はむしろ強まっている。(第一ライフ資産運用経済研究所主席エコノミスト 西濵 徹)
中東リスクが直撃
ペソ安と物価高に揺れる
フィリピンのマルコス大統領は、3月24日に「国家エネルギー非常事態」を宣言する大統領令に署名した。イスラエルと米国によるイランへの軍事行動をきっかけに、中東情勢は緊迫、原油や天然ガスなどエネルギー資源の供給懸念を理由にエネルギー価格が上昇している。
フィリピンはエネルギー資源を輸入に依存しており、その9割以上を中東が占めている。フィリピンでは元々、2025年末時点における原油備蓄が60日分程度、消費水準に基づけば約45日分程度に減少していたとされる。こうしたなか、宣言ではエネルギー供給の著しい不足、もしくは差し迫った危機があるとの認識が示された。
さらに、燃料や食料品、医薬品、農産物といった生活必需品の供給や流通の統制を目的とする省庁横断の委員会を設置することを明らかにした。さらに、備蓄確保に向けて、海外から100万バレル規模の原油調達に取り組むとともに、政府が迅速に供給確保を図るべく、燃料や石油製品の調達に関する契約金の一部前払いを可能にするとした。
加えて、公共交通機関や医療施設など生活関連インフラの運用継続支援のほか、エネルギー価格上昇による影響を受けやすい事業者などに対する公的支援の強化に動く。そのうえで、長期的な戦略として、石油製品の消費削減に向けた電気自動車(EV)普及や再生可能エネルギー導入などの検討も行われる見通しである。
次ページでは、中東情勢やエネルギー価格について検証しつつ、そのフィリピン経済にどう影響するかを予測する。








