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佐藤一郎のパースペクティブ

民主主義の手段としてのオープンデータ

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第8回】 2013年7月16日
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 なぜG8はオープンデータ憲章を決めたのでしょうか。各国に行政オープンデータを推進させることは、自国の行政データの公開が求められる一方で、他国の実情をデータを通じて直接的または間接的に知ることができます。

 例えば粉飾まがいの経済成長率を出す国があったとしても、行政オープンデータを通じて交通量データやエネルギー消費データなどが公開されていれば、そのデータから実際の経済活動が見えてくるはずです。

 国家間の安全保障では、他国の状況を把握することが第一歩、ただし、それを行うには自国の透明性も上げる、つまりデータを出さないといけません。昔のように国家同士の関係が軍事力だけで決まる時代ではありません。経済活動や文化面を含めた多様な関係を持つ時代では、国同士が互いに行政や経済活動に関して透明性を上げることは、国同士が互いに感じる疑念や不安を減らす方法だからです。

オープンにすることの恩恵と責任

 行政オープンデータは手段に過ぎません。その目的がたいせつです。行政データを企業活動に役立てるというのも目的の一つでしょうが、行政データの提供を通じて、政府・行政の透明性の向上を図り、市民の行政や政治への参画を促す、そして民主主義を発展させ、よりよい社会を作っていくという大きな目的もあるはずです。

 オープンデータを通じて、いままで知り得なかったことを知ることは有益であると同時に、知ったことへの責任も増えます。その責任を自覚することが、われわれに突きつけられた次の課題だと考えます。

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佐藤一郎
[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。

佐藤一郎のパースペクティブ

分散システムの研究を核としつつ、ユビキタス、ID、クラウド、ビッグデータといった進行形のテーマに対しても、国内外で精力的に発言を行っている気鋭のコンピュータ・サイエンス研究者が、社会、経済、テクノロジーの気になる動向について、日々の思索を綴る。

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