近年、いずれの国においても高揚するナショナリズムを背景に勢いを増すポピュリズムが、外交に大きな影響を及ぼす傾向にある。外交は現実を踏まえて冷静で緻密な国益計算の上に成り立つべきものだが、はたしてポピュリズムを乗り越えることができるのであろうか。どの国においても政治の決意が試されている。
米中首脳会談に象徴される
東アジアの構造変化
現実を踏まえた戦略を
日本は、中国の台頭による東アジアの構造変化と中国リスクの大きさという現実を踏まえた戦略を、講じていかなければならない。
日本が直視すべき東アジアにおける構造変化とは、どのようなものだろうか。まず、中国の台頭とともに、米国にとっての中国の重要性は圧倒的に高まった。かつて米国の最大の経済的パートナーとして日本が占めていた地位(米国の貿易総額に占める割合や財務省証券の保有高など)は、中国にとって代わられている。
留学生の数も1990年代は日本が圧倒的に多かったが、今や中国は20万人近く、日本は2万人を数えるに過ぎない。中国系や韓国系などのアジア系米国人の人口は拡大しているが、唯一減少しているのは日系アメリカ人の人口である。
先月、習近平国家主席とオバマ大統領の初の首脳会談が、8時間にわたりカリフォルニア州サニーランドで行われた。米中間では首脳会談のみならず、戦略経済対話が国務・財務長官レベルで行われ、間断なき対話が続けられている。
日米のような同盟関係とは質的に異なると言っても、今や米中は世界で最も重要な二国間関係であることは認めざるを得ない。また、オバマ民主党政権は共和党政権、とりわけブッシュ政権のような、価値を尊重し同盟国関係を優先する政権とは異なり、実務重視の政権であることも理解しなければならない。
韓国もこうした東アジアの構造変化に、敏感に対応をしている。朴槿惠大統領は就任後、米国に次いで中国を訪問先に選び、中国重視の姿勢を示した。韓国にとってみれば、中国は最大の貿易パートナーであり、将来的にもそうなのだろう。