障がいを持った子どもたちが
のびのび学べる学校を!

松田 話は変わりますが、藤沢さんご自身の夢や目標って何ですか。

藤沢 私ですか。いま関心を持っているのは障がい者の教育についてです。日本は障がいを持った子どもたちに教育の機会が十分に与えられていません。いつか、障がいを持った子どもたちがのびのびと学べるように学校をつくってみたいですね。

松田 どうして障がい者教育に問題意識を持つようになったのですか。

藤沢 私と同世代で、障がいを持った子どものいるお母さんたちと話す機会が何度かあって、みなさん真剣に「子どもより早く死ねない」と口々におっしゃるんです。そういう状況を見ると、なんとかしないといけないだろうと。

松田 たしか、有名な政治家のお子さんも発達障がいを持っていて、日本ではなくイギリスのボーディングスクール(寄宿生の学校)に通っていると聞きました。

藤沢 はい、小学生のころにイギリスに行ったそうなんですが、甘えたい年頃ですから、最初は寂しかったり、なじめなかったりして。それで、その政治家の方が「日本に帰ってくるか」と聞いたら、お子さんは「日本には居場所がないから、ここで頑張る」と答えたそうです。その話を聞いて、泣けちゃって。

 子どもが自分の居場所がないと感じるような国にしたのは、私たち大人の責任だとおもうんです。そこは何としても変えていかないといけないですよね。

障がい者は“ハンディキャップ”ではなく
才能を与えられた“ギフテッド(Gifted)”

藤沢 障がい者教育の問題は、社会の多様性とも深く関わってきます。日本だと障がい者を特別なものだとみなして、普通の教育と隔離している。これはどう思われますか。

松田 日本は「ひまわり学級」とか、それらしい名前をつけていますが、実態は完全隔離です。完全隔離は障がいを助長する面があるので、個人的には賛成できません。子どもは環境適応力が高いので、たとえば発達障害の子どもばかりのクラスだと、その環境に順応してしまうんです。

藤沢 アメリカだと、どうですか?

松田 アメリカではインクルージョン教育といって、なるべくみんな一緒に教育を受けさせる流れになっています。すべての授業を一緒に受けることはできないかもしれませんが、一緒にできる科目は一緒にやる。基本的には障がいを持った子どももそうでない子どもも区別していません。

 一緒に授業をやると、多動性障害の子どもが授業中に立ち歩いてしまうこともあります。でも、先生はそれを見て怒らずに、「あら、ありがとう。プリント配ってくれるのね」といってプリントを渡したりする。そうやって子どもに役割を与えて承認することで、子どもたちは承認欲求が満たされて、多動症状が落ち着いていくというケースも報告されています。

藤沢 つまり障がいを持った子どもも一つの個性として社会が認めるということですね。

松田 最近、アメリカでは障がいを持った人のことを「ハンディキャップ」ではなく、「ギフテッド(Gifted)」と呼ぶんですよ。昔はギフテッドというとエリートのことでしたが、いまは障がいも天から与えられた才能の一つと見なしているんですよね。

藤沢 その考え方が多様性のある社会を支えているのでしょうね。日本もぜひ多様性を受け止める社会になってほしいと思います。それが本当の「グローバル人材」が育つ社会ではないでしょうか。

(取材・文 村上敬)


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