フランス・エビアンで行われたG7サミットPhoto:Pool/gettyimages

NATOの防衛費拡大
成長押し上げ効果の行方

 北大西洋条約機構(NATO)加盟国が2035年までの中長期的な防衛費の増大目標に関して合意したハーグ・サミットから1年が経過した。

 合意では国防関連支出を対GDP(国内総生産)比で5%まで引き上げる。内訳をみると、既存の国防費を2%から3.5%へ引き上げるほか、インフラ整備やサイバーセキュリティーなどの新規の国防関連支出として1.5%にコミットした。

 NATOの統計をみる限り、ここ1年間で装備品向けを中心に国防支出は順調に拡大している。NATOに加盟するEU諸国全体における国防支出は、25年にGDP比2.5%と24年を0.4%ポイント上回った。

 国防支出(GDP比)が24年から低下したのはハンガリーとチェコのみで、ドイツやスペインといった大国では増加が目立つ。25年時点で、バルト3国、ポーランド、デンマークは3%を超える規模になっている。

 相次ぐ経済ショックで停滞する欧州では、国防支出増加による成長押上げへの期待が高まる。ウクライナ戦争以降のエネルギー集約型製造業の構造的な低迷に加え、次世代技術への対応が遅れた自動車や太陽電池といった分野で中国による輸出攻勢の被害も大きい。日本と並んで中東紛争によるダメージも深刻だ。

 オックスフォード・エコノミクスは、欧州における国防支出が今後も順調に拡大していくとみており、欧州の中期経済見通しを昨年のハーグ・サミットを受けて引き上げた。

 同時に、防衛費拡大による成長押上げ効果に対する過度の期待も禁物とみている。今後の数年間は、相次ぐ経済ショックのダメージを和らげるクッションの役割を果たすが、完全に相殺することは期待出来ないとみている。

 そうした慎重な見方をする理由は、成長押上げ効果が、(1)経済全体への波及(乗数効果)、(2)供給能力、(3)財政対応余地という3つのボトルネックによる制約を受けるためだ。