大阪府北部を地盤とする池田銀行と、大阪府南部を地盤とする泉州銀行が、2009年春をメドに経営統合することで合意した。

 この統合劇をめぐっては、三菱東京UFJ銀行が主導した地方銀行の再編との見方が一般的。しかし、真相はどうやらまったく逆だというのだ。

 事の始まりは池田銀の業績の悪化。2007年度第3四半期決算で、運用難から積極化させていた有価証券投資が裏目に出て、多額の含み損が発生した。

 その結果、昨年9月末に11.11%あった単体の自己資本比率が、同年12月末には9.60%までしぼんでしまった。中核的自己資本のTier1比率に至っては4%台まで低下するという危機的な状況に陥ったのである。

 池田銀はこうした事態を乗り切るため、大手銀行グループに属さず独立色を保ってきた経営方針を転換。三菱東京UFJを引受先とする300億円の優先株による増資を行ない、三菱東京UFJグループ入りすることを決断する。

 こうした経緯のすえに持ち上がったのが今回の統合話。相手の泉州銀は旧三和銀行の子銀行で、現在も三菱東京UFJが67.7%出資している。そうした両行が統合するのだから、池田銀から助けを求められた三菱東京UFJが、泉州銀に働きかけてまとめた話ととらえられても無理はない。

 しかし、事情に詳しい関係者によれば、「三菱からの独立が悲願だった泉州が仕掛けた統合だった」というのだ。

 両行は持ち株会社を設立し、その下で将来的に合併する意向だ。その際、一時的に統合銀行での三菱東京UFJの持ち株比率は30%台まで上昇するが、その後、市場で売却するなどして数年のうちに15%未満に引き下げることが検討されている。

 これが実現すれば、三菱東京UFJによる泉州銀の持ち株比率も低下し、持ち分法の適用からもはずれることになる。つまり泉州銀にとっては、統合によって三菱東京UFJグループ傘下から抜け出すことができる“ウルトラC”だというわけだ。

 地銀関係者によれば、旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行が統合した2005年頃から、地銀界では三菱東京UFJに対する反発が強まっているという。

 旧UFJが株主だったある地銀では、統合直後に旧東京三菱の担当者がやって来て、「今日から株主が変わったのだから、UFJとではなくて、うちとビジネスをやってもらう」などと一方的に迫られたという。

 この地銀は、「丁重にお断りした」というが、「他のメガバンクと比べて、地銀を支配しようという姿勢が顕著。地銀はその地域の雄でプライドも高いため、たとえメガバンクでもそうした姿勢を嫌う」と幹部は解説する。

 旧UFJ傘下にあった泉州銀も事情は同じだったと関係者は明かす。「旧東京三菱との統合後は、関係ががらりと変わり、独立のタイミングを計っていた」(関係者)というのだ。

 今回の統合により、関西地域の地銀再編が大手行主導で加速するとの見方も強い。しかし、今回のような事情による統合であれば、その可能性はそれほど高くないのかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 田島靖久)