金利上昇「衝撃度」ランキング!【26業界】苦しくなる企業はどこ?Photo:PIXTA

物価高で販売価格が上昇しても、仕入れ価格や人件費、物流費の増加に消費者の節約志向が重なり、小売企業の利益が素直に増えるとは限らない。そこへ新たな重荷となるのが金利上昇だ。実店舗を多数展開する小売企業では、店舗や設備への投資、商品在庫などに多額の資金が必要で企業によっては有利子負債が膨らみやすい。店舗物件を賃借する企業ではリース債務を抱えるケースもある。特集『金利上昇「衝撃度」ランキング!【26業界】苦しくなる企業はどこ?』の本稿では、2年以内に返済・償還を迎える有利子負債に着目し、金利が1%上昇した際の利益への打撃を独自試算した「金利上昇衝撃度」で小売業各社をランキングした。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

物価高に人件費・物流費上昇が重なる小売業
次の重荷は「借り換え金利」の上昇

 インフレ下では、モノやサービスの販売価格は上昇する。しかし、スーパーや量販店、外食などの小売業で、価格上昇がそのまま売上高や利益の増加につながるかというと、必ずしもそうではない。

 店頭価格の引き上げが行き過ぎれば、消費者の節約志向や買い控えを強める。値上げによって販売単価が上昇しても、販売数量や来店客数が減少すれば、売上高を十分に伸ばすことはできない。

 しかも、上昇するのは販売価格だけではない。仕入れ価格も上がっている。小売業は店舗運営などで多くの人手を必要とするが、人手不足を背景に人件費は上昇している。物流業界でも人手不足が続いており、物流費の上昇も採算を圧迫する。

 実店舗を多数展開する企業では、店舗や設備への投資、商品在庫などに多額の資金が必要になる。店舗物件を賃借する企業ではリース債務を抱えるケースもある。このため、企業によっては有利子負債が膨らみやすく、そこに金利上昇という新たなコスト増要因が加わりつつある。

 2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策を解除して以降、日本にも「金利のある世界」が戻ってきた。日銀は26年6月、政策金利を1%程度まで引き上げた。さらに8月17日には、長期金利の指標となる新発10年国債利回りが一時2.930%と、約30年ぶりの高水準まで上昇した。

 インフレへの警戒はなお根強く、市場では9月の日銀金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るとの観測も強まっている。

 海外に事業拠点を持つ小売企業にとっては、日本国内の金利だけが問題ではない。現地金融機関から借り入れたり、外貨建てで資金を調達したりしている企業は、海外金利の影響も受ける。

 中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇などを背景に、海外主要国でも金利には上昇圧力がかかっている。

 米国では、インフレ懸念や財政悪化への警戒などから超長期金利が上昇し、30年国債利回りは8月中旬に5.3%台を付けた。

 FRB(米連邦準備制度理事会)は7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で政策金利を3.50~3.75%に据え置いたものの、12人の投票メンバーのうち3人は0.25%の利上げを主張して反対票を投じた。年初に想定されていた利下げ局面から様相は大きく変わり、追加利上げの可能性も意識される状況となっている。

 ECB(欧州中央銀行)も、中東情勢に伴うエネルギー価格高騰によるインフレ圧力に対応するため、6月に政策金利を0.25%引き上げた。7月は政策金利を据え置いたものの、エネルギー価格上昇のインフレへの波及を警戒している。

 こうした金利上昇は企業の利払い負担を増やし、利益を圧迫する。ただし、その影響の大きさは企業によって一様ではない。重要なポイントになるのが、借入金や社債の返済・償還時期である。

 既存の借入金や社債の多くには、契約時に決められた金利が適用されている。このため、市場金利が上昇したからといって、全ての有利子負債の金利負担が直ちに増えるわけではない。返済や償還期限を迎え、より高い金利で借り換える段階になって、金利上昇の影響が本格的に表れる。

 従って、有利子負債が多額であっても、返済・償還時期が5年先などに集中していれば、当面の利払い負担への影響は限定的だ。

 反対に、有利子負債の総額がそれほど大きくなくても、その多くが近い将来に返済・償還を控えていれば、借り換え金利上昇の打撃は大きくなり得る。

 そこで今回、決算期末時点で2年以内に返済・償還を予定している有利子負債を対象に、借り換え時の金利が1%上昇した場合の利払い負担増加額を試算した。

 さらに、その金額が直近3期の平均営業利益の何パーセントに相当するかを算出。利益への圧迫度を示す「金利上昇衝撃度」としてランキングを作成した。

 次ページでは、小売業界の企業を対象としたランキングを掲載し、金利上昇が各社の利益にどの程度の影響を与える可能性があるのかを詳しく見ていこう。