民主化へ舵を切り、欧米の経済制裁が解除されたことで、世界中の企業の耳目が注目するミャンマー市場。具体的な民主化政策の実行からわずか1年しか経っていないが、その変貌ぶりには驚くばかりである。東南アジアの「ラスト・フロンティア」とも呼ばれるが、実際に企業がビジネスを進める事ができる環境にあるのだろうか。ダイヤモンド・オンラインでは1年前からミャンマー市場の変化を追ってきた。本連載では企業進出の現場から、何が具体的な問題点なのか、またそれを乗り越えるようどのような努力が現在なされているのかについて見ていきたい。第1回は、1年前に挙げられていたビジネス上のリスクが、どの程度改善されたかをレビューしてみたい。
希望と戸惑いのミャンマー
ミャンマーを取り巻く環境は、この1年で大きく変化した。
ヤンゴンの街並みを歩くだけでもそれは容易に感じることができる。町中を走る車の量の増大とそれによる渋滞の悪化、外国製品の広告の増加、あちこちで始まっている建設プロジェクト、不動産価格の高騰、若者たちのファッションの洋風化、多くの新規店舗の開店等、このスピードで変わっていったら数年でどこまで変わってしまうのかと思うほどだ。
一方で、少し裏道に入れば、そこには昔ながらの静かなバラックの家並みがこの1年の変化など関心もないかのようにたたずんでいたりする。街中の喧騒とは切り離された、昔ながらののんびりとした時間がそこには流れている。ミャンマー自身が、急激な変化の激流に、希望と戸惑いを感じながら、突き進んでいるようだ。
その中で、果たして1年前に期待された日系企業にとっての企業進出の現場はどうなっているのだろうか。当初の予想通り、日本企業が大挙して進出し、現地での活動を始めているのだろうか。
2013年2月のジェトロセンサーによると、2011年3月30日のティンセイン大統領による新政権誕生後、64社が新たに進出・サービス開始について発表している。一方で、進出を検討し、現地視察まで行く企業は多いが、実際の進出までに至らないケースは、その何十倍もあるとも聞く。
実際のところ、日本企業にとって、どれほどビジネス環境としてこの1年間で改善されたのだろうか。具体的に、投資決断の際に問題になる点は何なのだろうか。それはどのように対応しうるものなのか。また今後は、現地のビジネス状況はどのように変わっていくのだろうか。