安倍晋三政権は、参院選後、「集団的自衛権の行使」に向けて、憲法解釈の変更に猛然と乗り出している。いよいよ“解釈改憲”の決行だ。
首相が参院選で憲法改正を前面に出さなかったのは、官僚主導の解釈の変更で済ませたほうが得策という判断によるものだろう。
安倍首相の流儀では正々堂々と改憲を掲げたいところだが、それで自分の意向通りに実現する保証はない。それに時間的に少なくとも「6年はかかる」(首相)ことになる。迅速に一方的に決めるには、官僚などが勧めるように、憲法解釈の変更によるほうが早くて確実だということだろう。多少の批判や抵抗があってもそれで乗り切れると判断したのだ。
「ヒトラーの手口」で
日本も事実上の改憲へ?
首相のこんな思惑に対して、ひいきの引き倒しになったのが、8月1日の麻生太郎副総理・財務相の“ナチ発言”である。
新聞報道(8月2日毎日新聞)によれば、麻生氏は講演で憲法改正に関してこう語った。
「『静かにやろうや』ということでワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口、学んだらどうかね」
私はテレビのニュースでこれを聴いて、即座にこれは解釈改憲についての麻生流の援護射撃であると理解した。
ワイマール共和国(第一次大戦後のドイツ)の歴史に関する麻生氏の認識や知識の正誤はこの際さて置いて、彼の歴史理解に基づいて発言を精査するとこう受け止めざるを得ない。