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米トランプ政権がバイデン政権下で整備された火力発電規制を続々と撤廃している。他方、日本国内では2026年度から排出量取引制度への参加の義務化が始まったが、企業活動や国民生活に正しく便益を与えるのかは未知数だ。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、国内の環境政策の現在地点と課題を解説する。(アクセンチュア 素材・エネルギー本部マネジング・ディレクター 巽 直樹)
米国で火力発電規制が続々撤廃
日本ではGX-ETSの参加義務化も見えない便益
9月14日、米環境保護庁(EPA)は、バイデン前政権が設けた火力発電所の温室効果ガス(GHG)排出規制の大部分を撤廃する最終規則を発表した。石炭火力や新設ガス火力にCO2回収・貯留(CCS)を前提とする基準を課す規制である。EPAは、90%のCO2回収を前提としたCCSの実証性、費用、期限までのインフラ整備を問題にした。
今回の撤廃は、2026年2月12日の09年危険性認定と自動車の温室効果ガス排出規制の撤回に続くものだ。同月20日には、石炭火力などの水銀・有害物質規制の強化分を撤廃すると発表した。
EPAは同時に、残る火力のGHG排出基準の撤廃や規制権限に関する追加提案も示したが、こちらは未確定で、健康・環境への影響を懸念する反対論もある。米政権の判断に日本がそのまま倣う必要はないが、規制を支えてきた前提が再検討された事実は重い。
CCSを対象とする45Q税額控除を存続させている米国でも、EPAは最終規則の理由説明で、税額控除はCCSの費用自体を減らす措置ではなく、その負担を事業者から納税者に移すものであるため、規制の費用を評価する際に控除額を差し引くべきではないと論じている。事業者の支払額が減ることと社会全体の費用が減ることを分けて考えるこの視点は、日本のCCS支援にも必要である。
日本は、CCSの費用と排出枠価格との差を15年間支える制度を準備している。CCSはCO2を回収するために蒸気や電力を消費し、同じ電力量を届けるには追加の燃料や供給力が必要になるため、補助金で事業者の帳簿を黒字にしても、その追加負担は残る。
さらに、26年度から参加が義務化された排出量取引制度(GX-ETS)で排出に価格を付ければCCSの採算は帳簿の上では改善し得るが、政府が制度によって成立させた採算を、その制度が国民にもたらす便益の証明に使うことはできない。
次ページでは、不透明なままの国民生活への便益と国内の環境政策事業の課題を解説する。







