中南米ではキャリアの成長機会に対する期待が強く、アジア太平洋地域では、企業が掲げる理念だけでなく、日々の就業環境や実際に受けられる支援が重視されるという。

 こうした結果について、ランスタッドの常務執行役員兼プロフェッショナルタレントソリューション事業本部長の佐藤有氏は、海外拠点を持つ日本企業に対して、地域ごとの期待値の違いに注意を促している。

 日本本社で成功した人事制度をそのまま海外に導入しても、中南米では成長機会が不足すれば離職につながり、北米では経営陣の透明性や公平性が問われる。社員が何を求めているのかを把握せず、企業側が良いと考える制度だけを導入しても、離職防止につながるとは限らない。

「辞めたい」と言われる前に
企業が取り組むべき離職対策

 では、企業は離職リスクを減らすために何をすべきなのか。

 ランスタッドは、海外展開する企業の人事・経営陣に向けて、地域別のEVPの設計、潜在的離職リスクの早期把握、Z世代に対する成長機会の提示などを提言している。また、ワークライフバランスについても、単に残業時間を減らすだけではなく、柔軟な働き方や休息を取れる仕組みを実際の職場に定着させることが重要だとしている。

 今回の調査から浮かび上がるのは、社員が会社を辞めようと考える理由は一つではないということだ。

 給料への不満、仕事と私生活の両立、キャリアの停滞、上司との関係など、離職につながる要因は複雑に絡み合っている。さらに、同じ制度や待遇であっても、世代や地域によって受け止め方が異なる。

 社員が退職を申し出たとき、企業側は「なぜ辞めるのか」と疑問に思うかもしれない。しかし、退職の意思が表面化する前から、社員の中では不満や将来への不安が積み重なっていた可能性がある。

 人材の流出を防ぐために必要なのは、退職者が出てから理由を調べることだけではない。今働いている社員が何に不満を感じ、何を期待しているのかを継続的に把握することだろう。