新興国株指数の急落は「買い場」か「危険信号」か?利益予測がブレても長期視点なら強気でいい理由【投資信託の最前線】

年初来で5割近い上昇を見せていた新興国のテクノロジー・半導体株。しかし、足元では急速な下落に見舞われ、株価の乱高下(ボラティリティ)が再び激しくなっています。なぜ今、台湾や韓国を中心とする新興国ハイテク株はこれほど激しく揺れ動いているのでしょうか。BNPパリバ・アセットマネジメントが10月下旬に公表した最新レポートを紐解くと、「AIブームの影で、新興国株ハイテク株の利益見通しに大きなブレ」があることがわかりました。株価乱高下の本質と、長期投資家が見落としてはならない「収益シナリオ」を解説します。

新興国株指数が高値から再び急落!
新興国ハイテク株の「激しい値動き」が再燃

 BNPパリバ・アセットマネジメントは、10月23日付で調査レポート「Why have emerging market tech stocks been so volatile?(新興国テクノロジー株の価格変動が大きい理由)」を公表しました。デモ活動による政局不安などからフランス国債の利回りが上昇している欧州債券市場とともに、市場の話題となっているのが、新興国株式市場において、半導体およびテクノロジー・ハードウェア株のボラティリティ(価格変動)が再び高まっていることです。

 韓国や台湾のテクノロジー企業を主体に構成される新興国株の指数は、7月下旬の安値から一旦は上昇したものの、再びその安値をわずかに上回る水準まで下落しています。(10月22日の当英文レポートの作成時点)

乱高下の正体は「AIによる利益予測のブレ」
標準偏差は10%から82%へ急増

 急落した現状でも、年初からみると5割近い上昇を維持しているという状況ではあります。しかし、この高値からの急速な下落の背景には、様々な要因が絡み合っています。調査レポートでも、この水準のボラティリティの高まりは驚くべきことではないと指摘しています。

 要因としてあげられるのは、人工知能(AI)が経済や企業利益に与える影響についての予測に、大きな幅があることです。このことは、新興国テクノロジー・ハードウェア株の利益見通しにおける標準偏差(平均的なブレ幅)の上昇にも表れており、年初の10%程度だった標準偏差が、現在は82%程度まで急増しています。

 対照的に、非テクノロジー株の標準偏差は約5%で、年初から一定で推移しています(下のグラフを参照)。

 これは、現時点において、AIのもたらす影響に関する不確実性が非常に高いことによる結果と言えます。わずかな情報であっても企業利益の予測に大きな変動をもたらし、それが株価の大幅な変動につながるという状況が生じてしまうのです。

ノイズに惑わされないことが大事!
長期投資家が見据えるべき数年後の企業価値

 では、この激しいボラティリティの波に投資家はどう向き合うべきでしょうか。

 短期的な価格変動に一喜一憂しがちな局面ですが、長期的な視点を持つ投資家にとって重要な事実は、「今後の数年間の利益成長は、いずれにせよ大幅にプラスになる」と見られる点です。現在の予測では、新興国テクノロジー企業の利益は、今後2年間で90%近い成長が見込まれています。

 AI普及の道筋を巡って目先の業績予想に多少のブレが生じたとしても、その将来的な企業価値の成長ストーリーそのものは大きく変わらないでしょう。そのことを理解し、短期的な乱高下に振り回されず、長期の成長シナリオを冷静に見極める姿勢が求められます。

藤原延介さん藤原延介(ふじわら・のぶゆき)●1998年三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社後、2001年ロイター・ジャパン(リッパー・ジャパン)、2007年ドイチェ・アセット・マネジメント、2019年アムンディ・ジャパンを経て、2021年にBNPパリバ・アセットマネジメントに入社。マーケティング部 部長。ドイチェAMでは資産運用研究所長を務めるなど、約25年に渡り資産運用や投資信託に関するリサーチや投資啓蒙に従事。慶応大学経済学部卒。
◆投資信託の最前線
20年超にわたって投資信託動向を分析してきた藤原延介氏が、投資信託の最新動向やニュースを取り上げて、わかりやすく解説! 2024年から大幅拡大したNISAでは、投資信託での運用が不可欠に。でも「どうやって選べばいいの?」「組み合わせ方法は?」などわからない人も多いのでは? このコラムで投資信託の売れ筋やトレンドの変化をチェックすることで、投資信託の選び方や資産運用法などが見えてきます。
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本記事は2026年10月24日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。