**仮説と検証を繰り返し、企画の精度を高める

「そして二つ目は、先ほども言った、PDCAを回すということだ。言い換えると、何がもっとも効果を上げるのかを必死に考え続けて、やってみて修正し、またやってみる。これを真摯に続けることだ」

「すみません。今言われた『考える』って、どう考えることなのですか?」

「いい質問だ。ここでいう『考える』というのは、まず、現状を的確に把握する。そして、その中での重要な意味合いを明確にする。例えば、商品企画ならば、売れている商品、売れていない商品について、当たっている理由、外した理由を明確にする。当たっている理由、キーワードとも言うが、それを仮説として次の商品を開発する。そして、その結果を見て、そのキーワードをさらに磨きあげる、あるいはさらに新しいキーワードを見出して商品化するということを繰り返す。これを仮説と検証と呼ぶこともある。これを繰り返すのだ。これは、本質的に学習という行為になり、企画の精度を高めることにもつながる」

 安部野は、先ほどの才能の字の下に+と、PDCA=学習行動と書いた。

第7回<br />企業はなぜ成長、低迷を繰り返すのか?<br />――考える仕事、「企画」業務

 

「この二つ目については、基本的には、結果は事実として数字で見る場合が多いので、数字を読む能力も必要だな」

「すみません、僕、頭がついていかなくなっています」

「こういう話にまだ慣れていないわけだな。すぐにイメージができるようになる」

 安部野は続けた。

「つまり企画というのは、目的を明確にし、現状を把握したうえで、そこから、目的達成のための意味合いを抽出し、成功のための仮説を立て、実行案を組み立てるという一連の動作のことだ。世の中にクリエイティブといわれる仕事はあるが、そのクリエイティブには、必ず今、話をした手順が伴う」

 一つ一つの言葉は、高山の知っている言葉を使って安部野は話をしているのだが、説明されている内容全ての意味合いを十分に理解できているとはとても思えなかった。

 安部野は高山の顔を見た。