消費税引き上げを
延期することのリスク

 予定どおり引き上げるのか、それとも上げ幅を小刻みにするか、あるいは引き上げの時期を延期するのか――消費税をめぐって、真剣な議論が行われている。予定どおり2014年に3%、そして2015年にさらに2%、消費税を上げるべきだと主張する人の重要な論点は、財政に関する市場リスクである。

 消費税率の引き上げが先送りされれば、市場は政府の財政健全化の意思が弱いと見る可能性がある。その結果、国債が売られ、国債金利が急騰することになれば、日本経済にとって取り返しのつかない事態となる。

 S&P(スタンダード&プアーズ)のような格付け機関は、日本が消費税率の引き上げを延期すれば、国債の格付け見直しを検討せざるをえないと言っている。すでに相当に低い格付けである日本国債だが、もう一段格付けが下げられると、海外の金融機関は日本国債にはリスクが伴うと評価せざるをえなくなる。つまり、日本国債を保有しにくくなる。こうした動きが国債の金利に及ぼす影響は深刻である。

 消費税率の引き上げは、日本の財政再建プログラムと密接に関わっている。多くの人が指摘しているように、10%程度の消費税率では、少子高齢化のもとで膨れ上がる社会保障費をカバーすることは不可能である。

 一方で、2015年までにプライマリーバランスで見たGDP比の財政赤字幅を半減するという政府目標は、消費税率の引き上げなしで達成するのは難しい。また、これだけ景気が回復しているなかでも消費税率を上げられないようなら、今後も上げていくことは難しいと市場は見るかもしれない。

 安倍総理が最終的にどのような決断を下すのか、それに対して金利がどのような反応を示すのか、世界が注目している。