醤油屋さんへのツアー?一緒に商品開発?
出資者と事業者の「つながり」が新しいアイデアを生む
――事業者を訪れるツアーとは驚きです……。なぜ、御社はそこまでするのでしょう?
小松 事業者と出資者のつながりに加え、出資者同士のつながりが生まれるからです。たとえば岩手県陸前高田市にある老舗の醤油醸造蔵・八木澤商店は、津波によって工場及び直販店が全壊しました。創業200年以上という歴史もあってファンが多く、工場訪問ツアーを組んだらすぐに定員に達します。
もちろん、出資するだけでも事業者との“つながり”は生まれますが、当社は直接訪問する場を大切にしています。好きなミュージシャンのライブを見に行く感覚ですね。「一緒に戦おう」という姿勢が印象的です。
――ここでも、こだわりを持ってものを作るミュージシャンと事業者の共通点が見えてくるとは。
小松 出資者同士のつながりも強い、というのも共通しているのかもしれません。八木澤商店さんには「丼もののたれ 君がいないと困る」という商品があるのですが、ツアーの帰りの新幹線で「もっと多くの人に使ってもらうにはどうしたらよいか」という話になったそうです。すると出資者のひとりで、料理教室をされている方がレシピをつくってくださり、それをみんなで試食するという会が設けられました。
――「従業員未満」ではなく「従業員以上」かも……。
小松 ほかにも、気仙沼の製麺会社で、津波によって工場・事務所が全壊した丸光製麺さんは、出資者と一緒に再建方法を考える「ファンミーティング」を開催しました。「出資者の知恵を借りたい」とミーティングの開催を申し出たのは丸光さんでしたが、その後は出資者自身が様々な活動を生んでいます。百貨店で行われる物産展では出資者が販売員を務めていますし、東北の郷土料理「はっと」を全国に広めようと、レシピ開発も行っています。出資者の発案で、先日8月10日が「はっと」の日に制定されました。
――出資者同士がつながり、新たな動きを生むといった現象は、少なくともこれまでの金融商品では考えられませんでした。
小松 このような非経済的なリターンのことを、当社は「コミュニティリターン」と言っています。