俗に、『三つ子の魂百まで』と言います。

 これは、ある意味、運命論的な見方です。

 その人の生まれ持った様々なもの(性格やルックスや能力)が3歳までに確立して、その後の人生を支配するかのようにも聞こえます。しかし、3歳の子どもの魂がどの程度のものかは、己の3歳の頃を思い出せば分かります。幼稚園に入る遥か前に、大したものはありません。

 あるとすれば、親から引き継いだ遺伝的要素くらいでしょう。ということは、三つ子の魂の正体は、親から伝えられたDNAということでしょう。

 三つ子も年々齢を重ねて成長していいきます。なかには、圧倒的な才能を発揮する神童も生まれます。子どもの頃は全くパッとしなかった子が青年になると才能全開ということもあります。あるいは、あの子は将来凄いぞと思われていたのに、実は平々凡々のオトナになっちゃったということもあります。

 結局、一人の人間がどのように成長を遂げていくかは、決して予め決められているのではなく、あくまで本人次第だということなのでしょう。

 往々にして、才能の爆発というのは青年期に訪れます。芸術でも学術でも、生涯の傑作が10代後半から20代に書かれた例が沢山あります。夭折という言葉もあるほどです。

 じゃあ、オトナになってからは成長できないのでしょうか?

 いや。齢を重ねてなお傑作を書き続ける凄いオトナもいるのです。人生で最高の傑作を書いた後で、再びとてつもない創造力を発揮する男がいるのです。例えば、ポール・マッカートニーのように……。

 と言うことで、今週の音盤はポール・マッカートニー&ウィングス「バンド・オン・ザ・ラン」です(写真)。

【ポール・マッカートニー「バンド・オン・ザ・ラン」】<br />厄災を乗り越えて楽観主義が創り上げたポールの世界